先の民間税制調査会の「税制改革提言のポイント(年末調整制度の廃止)」は以下のように締めくくられている。

「自らの申告による税負担の確定手続を繰り返すことにより、税制に対する関心と納税者としての自覚は現状よりもはるかに高まることは間違いない。現在の日本社会に欠けている、主権者としての納税者の自覚を生み出すことが日本社会再生の鍵ともなる」

「民間税制調査会による税制改革提言のポイント」民間税制調査会メンバー 税理士青木 丈

来場する630万人をどこまで減らせるか

次に「税務署がパンクする」という懸念について考えてみたい。

冒頭で、税務署に訪れる人数は「5,000万人」と述べた。もちろん、この給与所得者全員が税務署を訪れるわけではない。実際はどれくらいになるのか。国税庁の「申告相談会場の設営及び会場運営に係る経費調査(令和4年度)」が参考になる。

この調査によると、確定申告者数2,295万人のうち、来場したのは289万人。来場率「12.6%」と計算している。この率を「給与所得者=5,000万人」に掛けると、来場するのは、およそ「630万人」。5,000万人に比べ少ないとはいえ、現状の3倍以上は看過できない人数だ。よって、630万人のうち、何人を電子申告(=e-Tax)にシフトさせられるかが要諦となる。

では、e-Taxの状況を見てみよう。

e-Taxの状況

国税庁レポート2024によると、2023年のe-Tax(以下 確定申告書等作成コーナー含む)利用者数は691万人(※)。4年前の186万人から、およそ3.7倍に増加した。会場申告から、e-Taxへのシフトは急速に進んでいる。

※ 自宅から納税者自身が申告した人数

e-Tax利用者数国税庁レポート2024より

とはいえ、確定申告が「わからない」「面倒」と思う給与所得者も少なくない。

まず、「わからない」について。主観ではあるが、一般的な給与所得者であれば、e-Taxを利用した確定申告が「難しい」と思うケースは少ないと思う。年々改良され、使い勝手も向上している。むしろ、紙よりはるかにわかりやすいはずだ。