バチカン教皇庁は年内にも中国共産党政権との間で締結した司教任命権に関する暫定合意をさらに2年間延長する予定だ。フランシスコ教皇は13日、中国との対話について、「満足している。結果は良好で、司教の任命に関しても、善意をもって協力している」と述べている。
中国では1958年以来、聖職者の叙階はローマ教皇ではなく、中国共産政権と一体化した「中国天主教愛国会」が行い、国家がそれを承認してきた。一方、ローマ教皇に信仰の拠点を置く地下教会の聖職者、信者たちは弾圧され、尋問を受け、拘束されてきた。その期間が長く続いた。
バチカンは司教任命権を主張し、「天主教愛国会」任命聖職者の公認を久しく拒否したが、2018年9月22日、中国側の強い要請を受けて、愛国会出身の司教をバチカン側が追認する形で合意した。暫定合意(ad experimentum)はバチカン側の譲歩を意味し、中国国内の地下教会の聖職者から大きな失望の声が飛び出した(「バチカンが共産主義に甘い理由」2020年10月3日参考)。
その後、バチカンと中国共産党政権は2020年9月に暫定合意の延長を決定し、22年に再度延長した。欧米諸国では中国の人権蹂躙、民主運動の弾圧などを挙げ、中国批判が高まっている時だけに、バチカンの中国共産党政権への対応の甘さを批判する声が聞かれた。
バチカンは中国共産党政権とは国交を樹立していない。中国外務省は両国関係の正常化の主要条件として、①中国内政への不干渉、②台湾との外交関係断絶、の2点を挙げてきた。ちなみに、バチカンは台湾と1942年以来、外交関係を樹立している数少ない国だ。
バチカンは過去、中国のカトリック教会が「愛国会」所属と地下教会に分裂していることを憂慮し、その克服のために腐心してきた。バチカンのナンバー2、国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿は2018年2月、イタリア代表紙ラ・スタンパとのインタビューの中で、「バチカンは中国の国家機関の改革を要求する考えはない。大切な点は信仰だ。地下教会信者たちを犠牲にする考えはない。ただし、バチカンは中国共産党政権といつまでも対立関係を続けていくことはできない」と述べ、中国との間でなんらかの解決を模索していることを示唆していた。ちなみに、愛国会に所属する信者、聖職者は約600万人と推定されている一方、ローマに忠実な地下教会の信者、聖職者数も600万人ぐらいと見られている。