それに、化石燃料輸入代金が勿体ないといっても、設備費なども合計した発電原価の総額で見れば安いからこそ、火力発電所は利用されてきたのだ。化石燃料は1トンあたりの発熱量が高いこともあって、安価な設備でも高い出力を得ることが出来る。それだけ優れた燃料なのだ。

これに対して、太陽光発電と風力発電が増えるほど、電気代は上がる。そうすると、産業空洞化が起きて、日本は工業製品を輸入するようになるから、これこそ国富の流出になる。

ところで、図1の「化石燃料輸入」は「国富流出」と同義ではない。油田・ガス田や炭鉱などの資源開発に参加するなどして、日本企業が権益を有していれば、輸入代金を受け取るのは日本企業だからだ(この場合でもロイヤリティは資源国に支払わねばならないことは変わらないが)。

執筆現在では石油価格はかなり落ち着いて国際価格は1バレル60ドル程度になっているが、今後、化石燃料価格の高騰や円安に対して日本経済を頑強な状態にしておきたいならば、自主開発比率(輸入資源のうちで日本企業が権益を有する比率)を高めておけばよい。

ところが、いま日本は脱炭素が国の方針となっている。このため、企業は資源開発に参加せず、むしろ権益を売却するなどしている。本当に化石燃料の輸入代金を心配するのであれば、資源開発への参加こそを進めるべきだ。

化石燃料は、その利用技術も含めると、全体として安価かつ有用なエネルギーだ。だからこそ日本はそれを活用して自動車を走らせ、製造業を発展させた。太陽光発電や風力発電で化石燃料利用を減らす試みは経済的にマイナスにしかならない。再エネ設備の輸入代金が流出するし、電気代高騰による産業空洞化で製品輸入が増えて国富が流出するからだ。

もしどうしても化石燃料の購入代金による「国富の流出」も減らしたければ、化石燃料の自主開発を進め、資源権益の確保を進めればよい。これはエネルギー安全保障の確保にもなる。