その一方、メディアを武器にさまざまな情報操作を行っている。米国政府は12日、ロシア国営テレビ局「RT」に対して「世界各国の主権問題に干渉している」と非難した。ブリンケン国務長官は「新たな情報により、RTがサイバー能力を持ち、隠密な情報操作や影響力行使作戦に関与しており、ロシア軍と緊密に連携していることが分かっている」と述べている。

ブリンケン国務長官は、RTに対する追加制裁を発表したばかりだ。米国務省によると、RTは「ロシア政府の直接的な一部」として活動しており、単に偽情報を広めるだけでなく、「ウクライナ戦争におけるロシア政府の情報機関および作戦の完全なメンバーだ」というのだ。

ところで、欧米メディアでは、プーチン氏はウクライナと停戦交渉に応じるのではないか、といった憶測情報が流れている。しかし、プーチン氏は今月2日、シベリアの学校で行った新学期の「公開授業」で子供たちを前に、「ゼレンスキー政権の越境作戦はロシアのドネツク州解放の妨害が狙いだ」と断定。「ウクライナ側の越境攻撃は奏功せず、ロシアは逆にこう着していた前線で占領地を平方キロ単位で広げている」と豪語している。そして「ウクライナの越境作戦は、ロシア国民の愛国心を高揚させ、メディアによると、モスクワで1日当たりの兵役採用人数が倍増した」と強気の姿勢を崩していないのだ。

ウクライナにロシアへの長距離ミサイル攻撃の使用を認めるかどうかで、ワシントンで13日、バイデン米大統領と英国のスターマー首相が協議したばかりだ。それに対し、プーチン氏は「西側武器によるロシア攻撃はロシアとの戦争を意味する」と威嚇し、西側の長距離ミサイルのウクライナ供与は新たなレッドラインだと示唆している。

ちなみに、ドイツの軍事専門家は「プーチン氏はこれまでも何度かレッドラインを提示して威嚇してきたが、実際には何も行っていない」と指摘、プーチン氏の発言を過度にシリアスに取り過ぎるべきではないと忠告している。すなわち、プーチン氏は‘戦略的曖昧さ’を駆使しているのだ(「戦略的『曖昧さ』が引き起こす不安」2024年6月4日参考)。