今でも終身雇用に重きを置く経営者や労働者が多いのは知っています。全ての会社が倒産しなければそれでもいいでしょう。全ての会社が素晴らしい経営者のもとでガバナンスもしっかりしており、のびのびと仕事ができればよいでしょう。でもそんな絵にかいたような会社は一握りもないのです。私が中高生時代に思い描いた「社会人天国説」は現実社会では夢物語であったといってよいでしょう。それより飛んでくる罵声と灰皿をどうかわすか、こちら方が身を守るうえで重要だったのです。
小泉進次郎氏が解雇規制緩和を述べ、賛否両論になっています。まず一点クリアにしたいのは小泉氏は北米並みに解雇できる社会を作ろうとは述べていないのです。整理解雇の4要件の見直しを述べているだけで基本的にはフレキシビリティを持たせようとしているのです。
左派的な方からすればそれは解雇しやすい話ではないか、というかもしれません。が、今の雇用環境では一生の間に1-2度転職するのが当たり前です。絶対に解雇できないというのはわかりやすい例でいえば絶対に離婚できない夫婦こそが正しいことである、と言わんとしているのと同じように感じます。夫婦と会社勤めは相思相愛でないと成立しないのです。仮面夫婦や仮面社員あるいは、片思いでは無理。離婚して新しい人生が開けた方も多いでしょう。もちろん、雇われる側が辞めるのは自由、だから離婚の例えはふさわしくないと意見があるでしょうが、それではあまりにも片務的だと思っています。
私はアメリカとカナダで経営側として従業員と共に歩んできました。過去、残念な結果になり、解雇したことはあります。アメリカで一度に170名ほど解雇したことがあります。従業員を講堂に集め、30代半ばにもならない私が会社を代表して会社の惨状から解雇せざるを得ないことを述べ、これまでの協力に多大なる感謝の意を伝え、次の雇用先のあっせんをした旨を述べました。私は罵声の中、刺されるかと思いましたが、大きな拍手と従業員たちからの「世話になったな」という謝意があり、私の社会人人生の中で深く印象に刻まれた出来事となりました。