また水槽の中央には不透明な仕切りを立てて、ホンソメワケベラが鏡と写真を同時に見れないようにしました。
そしてホンソメワケベラが鏡を見る前と後で、写真の個体に対する反応がどう変化するかを観察。
その結果、鏡を見ていない状態のホンソメワケベラは3種類のどの写真に対しても、同じ時間と頻度で攻撃をすることがわかりました。
これは鏡で自分の大きさをチェックしていないので、相手との大きさ比較ができなかったからでしょう。
ところが驚くことに、鏡を見た後のホンソメワケベラは、自分より小さな個体の写真には長く攻撃したのに対し、自分より大きな個体の写真には攻撃をしかけなくなったのです。
これは鏡で自分の大きさをチェックできたことで、「喧嘩を売っても勝てそうな相手」と「喧嘩をしかけたら負けそうな相手」とを選別できたからだと考えられます。
以上の結果から、
・ホンソメワケベラは鏡を見て自分の体格を正確に把握できること
・自分の鏡像を基準に相手との体格差を認識して、攻撃をしかける相手を選別できること
が明らかになりました。
これはホンソメワケベラが鏡で自分の姿を確認するだけでなく、鏡像を意図した目的に利用できる高レベルの認知能力を持っていることを示すものです。
従来、ホンソメワケベラを含む魚類の行動の多くは一般的に「本能」によるものとして説明されてきました。
しかし今回の知見から、彼らの自己意識は非常に柔軟であり、これまで考えられてきたよりは私たちヒトにずっと近いレベルにあると考えられます。
全ての画像を見る
参考文献
鏡よ鏡、私はライバルを攻撃しない方がいい? 魚は自分の大きさを鏡像で把握できる
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-13243.html