ただし、デンプンをたくさん摂取するために意図的に遺伝子を増やすことができると思えないので(ひょっとすると、そんな不思議な力がどこかに潜んでいるかもしれないが)、偶然、アミラーゼ遺伝子のコピー数が増えた人が、栄養吸収効率が上がったために、生き延びるのに有利だった?と考えている。
穀物中心に生活している集団ほど、アミラーゼ遺伝子数が多い可能性が示唆されていたが、これも面白い。
人類が生まれて以降、一つの遺伝子が増えたり、減ったりしていることが分かったことは、遺伝子がその数を増やすことが、思っていたよりも頻回に起こっているかもしれないことを示唆する。もちろん、ある遺伝子が増えることが、生き延びていく上で有利に働くと、遺伝子が増えた人の割合が特定の集団で増えていくが、遺伝子が増えたことが生きていく上で有利でなければ、その人たちの割合は増えていかない。
脂肪をたくさん摂取する地域では、脂肪の分解に欠かせないリパーゼ遺伝子の数が増えているかもしれない。新しい技術が生まれ、新しい情報が増えてくると、ワクワクするような知見が生まれる。ゲノム解析は重要なのだ。これからも医学はゲノム情報をもとに大きく発展していく。それが理解できない人たちに政を任せてはならない。
総裁選の討論を聞いていても、科学技術の重要性を強調する人はいない。経済を強くするには、イノベーションを生み出すことが不可欠であり、それには科学技術の強化が不可欠だ。総選挙のための総裁選びではなく、日本の将来を語ることのできる総裁選びにしてほしいものだ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年9月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。