ミツバチ「メーデー、メーデー、地面が見当たりません!」
1963年のある実験で、オーストリアの昆虫学者ハーバート・エランは、ミツバチの不思議な飛行特性に気づきました。
湖の上を飛ぶように訓練されたミツバチは、水面にさざ波や波紋が立っていると、対岸までたどり着けるのに対し、湖面が鏡のように滑らかだと、急に高度を下げて、真っ逆さまに墜落したのです。
当時、この結果は、ミツバチが「目に見えるサイン」を使って飛んでいることを示唆しましたが、詳しい原因は解明されていませんでした。
しかし2022年に、仏エクス=マルセイユ大学(AMU)の研究チームは、より精巧な実験セットを用いて、その謎を明らかにしました。
なぜミツバチは、墜落していたのでしょうか?
研究の詳細は、2022年3月23日付で科学雑誌『Biology Letters』に掲載されています。
目次
- 床を鏡にした途端、「墜落」が始まる
- なぜミツバチは鏡の上をうまく飛べないのか?
床を鏡にした途端、「墜落」が始まる
今回のミツバチの飛行実験は、屋外に設置された長さ220cmの長方形のトンネルを使って行われました。
ただこのトンネルには、ちょっと特殊な仕掛けが施されています。
天井と床が鏡張りになっており、表面を覆って普通の壁にも変えることができるように作られているのです。
ゴール地点には報酬として甘いお菓子がおかれています。
研究チームはこのトンネルを使って「鏡あり・なし」のそれぞれの条件で、ミツバチがゴールへたどり着けるかを実験しました。
まず、天井・床の鏡が覆われていると、ミツバチは一定の高度を保ちながら、楽々とゴール地点まで到達しています。
天井だけを鏡にした場合、トンネルの高さは2倍に見えますが、この条件でもミツバチは特に影響を受けずゴールまで到達できました。