体を動かすことは健康に良いと言われており、健康的な生活習慣と言うと、運動をイメージする人も多いと思います。

しかし、種類やタイミング、状況によっては、体を動かすことが健康に悪いことが分かっています。

この現象は「身体活動パラドックス」と呼ばれていて、具体的にどういったものなのかというと、余暇時間に体を動かすことは健康面でメリットがある一方、仕事中の身体活動は病気のリスクや寿命にマイナスの影響を及ぼすという逆説的なものです。

この記事では、身体活動パラドックスに関する研究に触れながら、なぜ身体活動パラドックスという現象が起こるのか、その背景に迫っていきます。

目次

  • 身体活動パラドックスとは?
  • 身体活動パラドックスの背景は複雑

身体活動パラドックスとは?

体を動かすことが好きな人には信じがたい事実かもしれませんが、体を動かすことが時に健康リスクになることを示した研究が多数存在します。

例えば、デンマークの国立労働環境研究センターに所属するホルターマン氏を代表とする大規模研究では、10万人以上を対象に約10年間にわたり、追跡調査を行った結果、余暇時間の運動量が多いと心血管疾患や死亡リスクを減少させる一方で、仕事中に体をよく動かす人は、逆にリスクを増加させることが分かりました。

この結果は、余暇時間に体を動かすことは健康メリットがある一方、仕事中の身体活動は病気のリスクや寿命にマイナスの影響を及ぼすという身体活動パラドックス現象を明確に表していて、体を動かすのは余暇時間に限った方が良いことを示唆しています。

仕事中によく動く人は心疾患などの健康リスクがある
仕事中によく動く人は心疾患などの健康リスクがある / Credit: 写真AC

当時、ホルターマン氏は、仕事中の活動量が多い人たちは、職場で体を動かすことが健康に繋がると信じているが、実際にはその見解は間違っている可能性があるとコメントしています。

さらに、仕事中によく動く人たちであっても、余暇時間に運動すれば健康に良い影響が期待できるものの、現実的には仕事で疲れ果ててしまい、余暇時間に運動するのは難しいとも述べています。