同志社大学を卒業してゼネコンの竹中工務店で働いている人が、公務員の知人から「いい大学出たのに町の工務店で働いてるのか」と言われたというエピソードが一部SNS上で話題を呼んでいる。竹中工務店とはどのような会社なのか。また、スーパーゼネコンといえば多くが東京証券取引所のプライム市場に上場(一部を除く)する大手一流企業ばかりだが、メーカーや金融、総合商社などと比べて世間的な認知度がいまいち高くないため、社名を名乗っても相手が“ピンときていない”といったケースは多いのか。ゼネコン業界の元社員などの見解を交えて追ってみたい。

 大手建設会社、ゼネコンのなかでも売上高が1兆円を超える大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店はスーパーゼネコンと呼ばれ、連結従業員数は1万人を超える。竹中工務店を除く4社は東京証券取引所プライム市場に上場している。

「大林組は東京スカイツリー、清水建設は東京都庁、大成建設は新国立競技場の施工業者として知られていますが、竹中工務店は東京ドームをはじめドーム形の建築物に強いという印象です。また、スーパーゼネコンは建築事業と土木事業の両方を手掛けていますが、竹中工務店は土木事業はあまりやっていないのも特徴です。スーパーゼネコンへの就職は、有名大学の建築系学部の研究室が各社と持っている推薦枠を使って決まるケースが大半なので、各社の役員クラスは大学時代の研究室のOB会などでつながりがあるため、皆顔見知りだったりします。以前の建設業界では談合が問題視されてきましたが、リニア中央新幹線の建設のように大規模な建設案件だと複数のゼネコンが共同で仕事を行うこともあり、談合のようなことが起きやすい土壌があります」(ゼネコン関係者)

20代後半で年収900万円だが…

 大手企業ゆえに高年収も実現可能だが、仕事はかなりハードだという。数年前までゼネコンに勤務していた元社員はいう。

「私が数年前に現場監督をやっていたときは、平日は朝7時に出勤して夜10時過ぎに退勤で、一日の残業時間は6~7時間、土曜も毎週出勤、月の時間外労働は合計100時間を超えていました。他のゼネコンも同じようなものだと聞きますが、それだけ残業が多い理由は、単純に業務量が多いから。現場が動いている昼間は職人や業者から引っ切りなしにかかってくる電話の対応や検査に追われ、夜は今後の工事工程を見直したり、検査の写真や報告関連の書類をまとめたりし、あっという間に22時を超える。ゼネコンの業界では私が聞く限りそれが当たり前なので、会社として長時間労働を改善しようという動きになりつつあったが、業務量・人員・工期の兼ね合いを考えると現実的に難しく、長時間労働が行われている現場も少なくありませんでした。

 ひと月あたり80時間程度の残業代は申請できたため、20~30代の非管理職であれば他業界の同年代の人より年収は高かった。20代後半で年収900万円近く貰っていたこともあります。ですが今年4月の時間外労働の上限規制適用によって、そうした旨味も減っていくかもしれません」

 今年4月に働き方改革関連法に基づき建設業界にも時間外労働の上限規制が適用され、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満に制限された。業界全体が工事現場従事者の長時間労働を前提に回ってきたため、広い範囲で工事遅延などの発生や人手不足の深刻化が懸念され、「2024年問題」と呼ばれている。

「4月からは土曜日は交代で出勤するなどして、できるだけ週休2日になるような取り組みは行われているようですが、建設業界全体が長時間労働を前提に回ってきたこともあり、工期によっては実現が難しい場合もあるのではないかと思います」(同)