ところが当のUSスチールは仮にこの買収が認められなければ厳しいリストラを余儀なくさせられると述べており、大統領と組合は労働者を守るのではなく切り裂く方向に着々と進んでいるのです。ここでバイデン氏が柔軟な姿勢を見せたという真偽不明の情報が出たようですが、バイデン氏は大統領候補者ではないからより中立的な立場に戻せる唯一の現職大統領ということになります。選択肢としては大統領選が終わるまでいったん買収案を取り下げるというのもあるようですが、それは愚策だと思います。そうではなく決定を先送りする手法はあるかもしれません。対米外国投資委員会(CFIUS)の決定は早ければ9月23日ともされます。

個人的には日鉄の買収はありだと思います。とすればセブン&アイのカナダ社による買収もあり、ということになります。財務省が外為法上の「コア事業」に認定したと報じられています。ただ、これは買収阻止ということでもなさそうで報じられているようにカナダ社が買収額を真摯に検討し、あと1-2兆円積み上げれば決まりになります。私が勝手に想像していた三井物産によるホワイトナイトですが、別記事で同社のCFOが同社の成長戦略として投資用資金を5兆円程度使えると述べているのでまさか他の事業を全部諦めて更に何兆円か積み上げてセブン救済買収をするのは体力的に難しそうです。となれば国境なき買収合戦が今後もしばしば起きるという覚悟はいよいよ日本でも本格化すると思います。

後記 チャールズIIIのCornation Medalを私の周りで2人授与され、その祝賀会に参りました。(授与された人は英国が40万人、カナダが3万人だったと記憶しています。)1人はインドネシアコミュニティを通じて、お1人は台湾系ながら教会の牧師としての長年の活躍をたたえられたものです。日本人、日系人の受賞はなかったと理解しています。日本は経済的に躍進したのですが、世界レベルで見るコミュニティ活動や社会貢献では一部の方の活躍は存じ上げていますが、組織力や草の根的見地からはかなり遅れていると言わざるを得ません。日本人はやや無関心主義が他国に比べて強いかなと思います。世界で活躍するにはビジネスだけできても評価は低いのです。そこを多くの海外在住の日本人ですら気がついていないのは残念なことです。