グーグルが圧倒的なシェアを維持してきた検索エンジンサービス市場で、マイクロソフトが提供する「Bing」がシェアを伸ばしており、国内(デスクトップ)ではすでに「Yahoo! JAPAN」の「Yahoo!(ヤフー)検索」を上回りシェア2位になっているという。なぜBingが伸びているのか、グーグルの違いとは何か。また、ユーザはどのように使い分ければよいのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 総務省「令和5年 情報通信に関する現状報告の概要」によれば、検索エンジン(デスクトップ)の世界市場シェアは1位がグーグルで84.1%、2位がBingで9.0%(2022年12月時点)。グーグルのシェアが徐々に低下しているのに対し、Bingのシェアが上昇している。また、Statcounter Global Statsの調査によれば、日本国内の市場シェア(デスクトップ)はグーグルが76%、Bingが16%、ヤフー検索が7%となっている(24年8月)。

 モバイルの検索エンジンサービスの世界市場はグーグルが非常に高いシェアを維持しており、他の検索エンジンはいずれも2%未満であることからも(前出・総務省資料より)、検索エンジンの世界ではグーグルが圧倒的な強者であることは明らかだ。ヤフー検索もグーグルから検索技術と検索連動型広告配信技術の提供を受けており、グーグルなしでは成立しない。

 検索エンジンのグーグルが開発されたのは1997年とされ(法人としての米グーグル設立は翌98年)、マイクロソフトがWindows Live SearchとMSN Searchを統合するかたちでBingをリリースしたのは2009年のこと。先発のグーグルは一時は世界シェア9割以上を占めていた。現在ではグーグルはウェブブラウザの「Chrome」、Bingは「Edge」に搭載されている。

 一方、ここ最近、何かと話題を振りまいているのがBingだ。マイクロソフトは生成AIのChatGPTを開発した米OpenAIに出資しており、昨年12月にはBingに生成AIのチャット機能を組み込んだ「Microsoft Copilot」をリリースするなど、生成AI活用ではグーグルの先を行っているとされる。

グーグルとBingの違い

 グーグルとBingには、どのような特徴の違いがあるのか。株式会社GxPのマーケター兼コンテンツ ディレクター、澤井貞夫氏はいう。

「BingはPC市場で高いシェアを誇るWindows OS搭載PCのデフォルトのブラウザ『Edge』の検索エンジンなので、Windows PCの場合、ユーザがグーグルやChromeを使おうとすると、自身の判断で選択する必要があります。当然ながら両者のアルゴリズムは異なるので、同じキーワードでも検索結果・表示内容は違ってきますが、ともに随時アルゴリズムの変更が行われているため、検索結果の傾向や特徴も変化し続けています」

 Bingが伸びている理由は何なのか。

「コロナ禍によって人々のPC利用時間が増え、前述のとおりPC市場ではWindows PCが高いシェアを持っているため、デフォルトのEdgeの利用頻度が高まっていることが考えられます。また、世界的にChatGPTが大きく注目されていることも影響しているでしょう。

 ちなみにAIとの連携という点では、グーグルも『AI Overview』の提供を日本で開始しています。検索エンジンのシェア争いがAIをめぐる競争の様相を呈しており、ユーザの利便性が向上する一方で、人間の仕事をさらにAIが侵食することにつながるかもしれない皮肉さも感じますが、これは産業革命以来避けられない時代の変化ですね」(澤井氏)