320 kbit/秒の音質は「CDと比べてどれくらい悪いのか」
先にもご紹介した通り、Spotifyの最高音質は「320 kbit/秒」です。では320 kbit/秒の音質はCDと比べてどれくらい悪いのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
仮にSpotifyの音質がCDよりも圧倒的に悪いのであれば「他のサブスクリプションサービスに乗り換える」か「CDを買う」ことを検討する方も少なくないのでは。
そこで今回、筆者はABXテストを実施してみました。ABXテストは、ロスレス形式の「A」と、ロスのある「B」を用意して聴き比べ。10回聴き比べて自分が聴いているのがロスレスか否か、正答率が95%以上(10回中9回正解)でないと「聴き分けできていない」ことを示すテストです。
結論から言えば、320 kbit/秒のAACとCD音質の音源データを聴き比べたところ、筆者の正答率は半分以下でした。まったく違いがわからなかったのが本音です。普段から音質にこだわっているオーディオ愛好家の方やミュージシャンの方などでないと、両者の聴き比べで音質の違いを判断するのは難しいのではないかと素直に感じます。
「音のプロ」は320 kbit/秒の音質とCD音源を聞き分けできるのか?
筆者は正直に言って、320 kbit/秒とCD音源の聞き分けができませんでしたが、筆者は「音のプロ」ではありません。
では「320 kbit/秒」は、音のプロにとっては高音質だと言えるのでしょうか。この点を検討するには、2004年に電子情報技術産業協会(JEITA)が策定した「CPX-2601規格」(※2010年にCPR-2601に移行)と、JEITA加盟企業11社によって行われた検証が参考になります。
「CPX-2601規格」はメモリオーディオ機器の音質表示に関する業界標準規格でした。同規格は00年代に携帯型音楽プレーヤーが普及する一方で、MP3が「CD並みの高音質」を謳うなど音質に関する標準規格が定まり切っていないことを問題視して、生まれたもの。
「CPX-2601規格」に関連して2005年に行われた講演では、JEITA加盟企業11社から選ばれた「音のプロ220人」による圧縮音源とCD音質の聴き比べデータも公開されました。なお圧縮音源とCD音質の聴き比べでは、違いを「わからない」「わかるが気にならない」「気になるが邪魔にならない」「邪魔になる」「非常に邪魔になる」の5段階で評価しています。
結果、320Kbpsや256Kbpsの圧縮音源では「わからない」という回答がほとんどで、128kbpsまでは「わかるが気にならない」という回答が多数を占めていたとのことです。
古いデータではありますが、業界標準規格を定めるうえでのブラインドテストで「320Kbps」と「CD音質」の差がわからないという回答が多数を占めていた点は興味深いものです。やはり、少なくとも「普通に聞き流す分には違いがわからないレベル」とは言えるのではないでしょうか。
まとめ
今回は「CDと比べてSpotifyは音質がいいのか、悪いのか」をご紹介しました。結論から言えば普通に聞き流す分には、Spotifyの最高音質(320 kbit/秒)はロスレスやハイレゾには及ばないものの十分に高音質です。一方でSpotifyにはネットワークの状態に合わせて音質が自動調整される機能もあり、320 kbit/秒に遠く及ばない音質で再生されるタイミングも少なからずあります。
たとえば標準音質の96 kbit/秒は、端的に言って「低音質」です。Spotifyにとって「音質」は大きな課題であると言えるでしょう。
実はSpotifyをめぐってはアプリ内でロスレスオーディオを提供する準備が進められていると噂されています。これは、Android版Spotifyアプリの最新ビルドを解析したユーザーが初出の文字列が追加されているのを発見したことから出た噂で、Spotifyプレミアムの追加機能になると見られています。
つまり、将来的にはCDと同程度の音質で再生できる可能性があるということ。高性能のイヤフォンやヘッドフォンを使って音質にこだわっている方にとっては朗報なのではないでしょうか。
※サムネイル画像(Image:T. Schneider / Shutterstock.com)
文・オトナライフ編集部/提供元・オトナライフ
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