となるでしょう。

しかし、意識を脳科学的に解明する試みは難航していました。

古典的な理解では、脳内に生じる特定の電気信号のパターンが意識の本質であるとされています。

そのためこのパターンさえ解明できれば、電気信号から意識のパターンをエンコードし、脳を模倣するAIのニューラルネットでも意識を再現できると考えられています。

実際、これまでの研究によって、痛み、苦しみ、恐怖、嫌悪、そして快楽などを表現する電気信号のパターン、つまり感情のコードが解明されています。

またこの信号を人工的に生成し、マウスの脳に流し込むことで、強制的にマウスに特定の感情を引き起こせることにも成功しました。

感情を情報コード化して強制的に再生することにマウス実験で成功

しかし感情のコード化は実現しても、現在に至るまで意識のコード化はできていません。

失敗の原因として、意識を示す電気信号が現在のコンピューターでは探し出せないほど複雑である可能性も考えられます。

そのため最終的な解決手段として、人間や動物の全ての脳細胞や神経接続、そして全ての電気活動を完全に再現する「全脳シミュレーション」が提案されています。

古典的な理解では、完璧な全脳シミュレーションを構築できれば、現実の脳と同じように機能し、意識のありかを突き止められるはずだからです。

一方、量子意識理論では、単なるネットワークからは、たとえそれがどんなに完璧なものであっても、意識は出現しないと考えています。

量子意識理論では、詳細なネットワーク構築の重要性は認めているものの、それに加えて意識を発生させるには量子現象を追加で考慮しなければならないと考えてるからです。

古典的ネットワークで「点」として表現される部分は現実にはニューロンと呼ばれる細胞であり、意識を理解するにあたりニューロン内部で起きている量子生物学的な現象を無視できないからです。

量子生物学は細胞内部で起こる量子現象を理解する分野であり、近年大きな成果を上げています。