日鉄の買収計画は、案の定、鉄鋼組合を巻き込み、鉄鋼労働者票を取りたいトランプ、ハリス両氏を巻き込み、バイデン氏が決定的思われる決断をした。日経新聞社説は「日米鉄鋼再編を政治化するな」(3月16日)と見出しで、「政治が正当な理由もなく、民間企業の経営に介入してはならない」と、書きました。幼い主張で、政治化するのは必至の案件です。

日鉄経営トップは「しまった」と思ったら、違約金を払っても、早めに買収計画を中断するか、撤回し、大統領選後に出直す決断をすべきでした。「大統領選の終了を待って交渉を再開する」といえば、疑問に思う人は少ないでしょう。

「トランプ氏に近いポンペオ氏(トランプ政権下の国務長官)を多額の費用を払ってアドバイザーに雇った」、「1900億円の追加投資を決めた」、「取り締まりの過半数は米国籍とする」など、ずるずる譲歩案をだし、カネもだす。なんのための買収が分からなくなってきました。この「ずるずると譲歩案」が最もいけない。

純粋に経済、産業的に考えれば、日鉄の買収は単純に否定すべきではないのかもしれません。それにしても、論外のタイミングで買収交渉を公表(開始)したことは大失敗でした。私にとっては、日本を代表する鉄鋼メーカーのトップの判断能力の有無にショックを受けました。せめて米政府の裁定が出る前に、買収計画の撤回、中断を決断すべきです。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年9月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。