当方はこのコラムをプーチン大統領のモンゴル訪問直前に掲載しようと考えたが、ジャーナリストは相手を煽ることが仕事ではないから、事実関係とその背景を報じることだけに留めて置くべきだという結論になった。だから、プーチン氏がモスクワに帰国後、当方の夢についてコラムにまとめている次第だ。

当方の夢は、プーチン大統領をICCの要請でモンゴルが拘束し、ハーグに送ったならば、ノルウェーのノーベル平和賞委員会は即、2024年度のノーベル平和賞をモンゴルに贈ると発表する。もちろん、このニュースは世界に向かって発信される。それだけではない。欧米諸国を中心に「モンゴル支援国クラブ」が創設され、巨額の無償援助が実行され、原油を購入する資金も提供される。少なくとも、プーチン氏を逮捕したことでモンゴルに生じた経済的な負担は世界が背負うことを約束するのだ。

考えてほしい。プーチン氏が逮捕され、ハーグに収監された場合、ロシア指導部で大きな動揺が生じるだろう。メドヴェージェフ前副大統領のような過激な発言を繰り返す政治家もいるが、プーチン氏の専制主義的、独裁的な政治スタイルに抵抗を覚え、ウクライナ戦争でも「特別軍事計画」ではなく戦争だと認識している政治家がクレムリンに少なくないはずだ。彼らはプーチン大統領逮捕というニュースを知ったならば、ウクライナはロシア領土といったナラティブに酔ってウクライナ戦争を始めたプーチン氏の政策を継続することはないだろう。ロシア側のメンツが維持できれば、ゼレンスキー大統領との間で停戦交渉に応じてくるだろう(少々、楽観的過ぎるかもしれない)。

最も考えられるシナリオはクレムリンはハーグでプーチン氏釈放交渉を始めるだろうが、ロシア側が間違っても軍事行動に出ないように、欧米諸国は事前にモスクワに警告を発する(ロシアを説得できる唯一の手段は力だ)。

大モンゴル帝国時代、欧州までその勢力を拡大したモンゴル民族に欧州は恐れてきた。21世紀、モンゴルが世界の独裁者プーチン氏を逮捕すれば、世界は大喝采となり、モンゴルは世界を救ったとして高く評価されることは間違いないはずだった。そのうえ、ウクライナ戦争に幕が閉じれば、莫大な戦争資金が浮く。モンゴルは世界の経済を助けたことにもなったはずだ。ノーベル平和賞だけではなく、経済賞をも同時受賞したとしても誰も文句はいわなかっただろう。