近くにある遺伝子は連動して動きやすくなり、マクロシンテニーを維持することは先祖の使っていた遺伝子の連動システムを子孫が引き継いでいることを示しています。

より生物学的な説明をすれば以下のようになります。

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たとえば近縁の2種の1番染色体を比較した場合、一方の種の1番染色体に「A・B・C・D・E」という5種類の遺伝子が含まれていた場合、もう一方の種の1番染色体にも同じ5種類の遺伝子が含まれている可能性が高くなります。 人間とチンパンジーの染色体も非常に良く似ており、人間の1番染色体にあるほとんどの遺伝子は、チンパンジーの1番染色体にもあります。このような傾向は人間とチンパン時ーだけでなく広範な生物種においてみられることからマクロシンテニーと呼ばれています。/Credit:clip studio . 川勝康弘

しかし新たな研究により、この法則はミミズには当てはまらないことが明らかになりました。

ミミズのゲノムはまるで落ちた「お弁当」のようになっている

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海から淡水へ、淡水から陸上へ生活圏を変化する過程でミミズたちの先祖は遺伝子のシャッフルを行いました。/Credit:Thomas D Lewin et al.,Molecular Biology and Evolution (2024)

新たな研究では、ミミズのゲノムは完全にごちゃまぜであり、近縁のゴカイならば1番染色体にあるものが10番染色体に飛んでしまっていたり、15番染色体にあった遺伝子が2番染色体に飛んでしまうなど、無秩序化を起こしていたことがわかりました。

もし生物のゲノム全体をお弁当とするならば、具材が仕切りの垣根を飛び越えて、シャケが焼き物ゾーンから佃煮ゾーンに入り込んだり、ごはんが卵焼きゾーンに入り込んでいる状態と言えるでしょう。

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ミミズはゲノムが「完全にごちゃまぜ」になっていると判明!/Credit:clip studio . 川勝康弘

研究者たちは「ミミズのゲノムは広範に改変されており、先祖の海洋生物にあったマクロシンテニーが完全に失われていた」と述べています。