次にフォルクスワーゲンで何が起きたのか、です。報道の通り、同社のドイツ国内の工場の一部を閉鎖する案が経営陣から打ち出されました。これに対して労働組合や州、国も交えた泥仕合と化しており収拾がつかない状態にあります。経営陣のメッセージは非常にクリアで「このままではVWはやっていけない」であります。

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何が同社を狂わせたのでしょうか?基本的には欧州自動車産業の酷い状況、これに尽きると思います。コロナ前に比べ欧州全体では2割ほど需要が足りません。ご承知の通り欧州製の自動車は価格が高いのですが、それを高級だからといって買うのは日本人であって、実態としては日本製と同じものが3割から5割も高いコストをかけないと作れないといった方が正しい気がします。

そこで起死回生の一発がEV化であったはずです。もともと環境問題に敏感な欧州ではVW社の排ガス不正問題からスタートしてEVが政治主導で席巻したもののここに来て本格的な調整局面に入ってしまいました。ボルボ社はかつていち早く30年までにオールEV化宣言をしていたのについに撤回したぐらいです。更に中国製の安価なEVが市場を混乱させ、EUはようやく中国製EVに対する関税率を大幅に引き上げる措置を行うところです。

ところがその前にVW社の体力が失われてきた、こう見るのが正解でしょう。特にEVの時代が確実に来ると見込んでいた多くの関連産業界にとって需要側(顧客)が買わないことで当てが外れました。フォルクスワーゲン社はポルシェやランボルギーニなど高級ブランドを傘下に持つ一方、同社の車は大衆車製造に特化しています。ところが同社の車は全般的にデザイン性に欠け、例えば北米では苦戦の連続でアメリカ市場などへは過去何度もテコ入れを図っていますが、うまくいきません。

インテル、フォルクスワーゲンは確かにそれぞれの業界で大帝国を築いた実績があります。ただ、それらは昔の話であり、栄華はなかなか続かないのです。それを栄枯盛衰という言葉で切り捨てるにはあまりにも単純すぎでその奥底の理由を探る必要があると思います。