3人ものダイバーが同時に入れる潜水鐘だった?

海洋考古学者のショーン・キングスリー氏と、物体を回収したチームのメンバーである海洋考古学者のジム・シンクレア氏は、発見した物体は直径147センチもあり、料理用の大釜としては大きすぎると指摘しています。

また、この物体は2枚の銅板で作られており、周りには銅のリベットで固定された重厚な縁が取り付けられていました。

多くの人は鍋だと思ったようですが、シンクレア氏は、「過去に多くの古い木造船を見てきましたが、この物体が鍋のようには見えませんでした」とコメントしています。

鍋のような形に見えますが、潜水鐘の上部だったと考えられています
鍋のような形に見えますが、潜水鐘の上部だったと考えられています / Credit:Mel Fisher Museum, Sebastian

そして、この不思議な物体は、当時の潜水鐘の特徴と一致しており、また、潜水鐘を海底に安定して固定するために使われたと思われる、多くの鉄の塊の近くで発見されていたのです。

ドーム状の部分は潜水鐘の上部を形成しており、その他の部分は木や皮で作られた骨組みを金属で覆った防水のパネルによって囲まれていたと考えれています。中には3人ものダイバーが同時に入れるほどの大きさだったようです。

キングスリー氏とシンクレア氏は、サンタ・マルガリータ号から宝物を回収する際に、このタイプの潜水鐘が使用されたという公式の記録は見当たらないとしながらも、1625年、フランシスコ・ヌニェス・メリアンというスペイン人が、著書でこのような潜水鐘を作ったと記述していたことを指摘しています。

メリアンは17世紀にサンタマルガリータ号から350枚の銀のインゴット、数千枚の金貨、そして8門の大砲を回収した人物でもあり、ダイビングベルの使用を示唆している可能性があるとも考えています。

以上のことから、シンクレア氏は、発見された物体がメリアンが以前に記述していた潜水鐘、もしくはこの地域で失われた他の初期型の潜水鐘の一部であると考えています。

左はスペインの発明家ヘロニモ・デ・アヤンスが1606年にデザインした潜水鐘。右は1616 年にドイツの発明家フランツ ケスラーによって設計された潜水鐘
左はスペインの発明家ヘロニモ・デ・アヤンスが1606年にデザインした潜水鐘。右は1616 年にドイツの発明家フランツ ケスラーによって設計された潜水鐘 / Credit:en.wikipedia

キングスリー氏とシンクレア氏は、スペイン人がこの技術の先駆者であったと考えており、今回発見された潜水鐘は、1606年にスペイン人の発明家ヘロニモ・デ・アヤンツによって試作された潜水鐘(画像左)に基づいている可能性があると考えています。

このデザインは、後にベネズエラでの真珠採取に使用されています。

今回の発見に関する詳しい研究はまだ公表されていませんが、イスラエルのハイファ大学の海洋考古学者であるジョセフ・エリアフ氏は、「謎の物体が初期の潜水鐘の一部であった可能性が高い」と述べています。

また、「潜水鐘の継ぎ目は絶対に水を通さないようにしなければならないため、2つの部分の間にシーリング材やコーキング、または溶接のようなものがあった場合、仮説を裏付ける証拠となるでしょう」とも述べています。

今後、研究が進むことで、この点が明らかとなるかもしれません。