300年以上も昔、人は原始的な方法でダイビングをしていたのかもしれません。

1980年、アメリカのフロリダ沖に沈んでいた船の近くで、あるダイバーによって銅でできた謎のドーム状の物体が発見されました。

発見された物体は、円形で鍋のような形をしていたため、発見者たちは特大の調理用鍋だと思い込み、以来フロリダ州セバスチャンのメル・フィッシャー博物館に保管されていました。

しかし、実は今になってこの鍋のような物体が、実は「潜水鐘(せんすいしょう)」と呼ばれる、かつての原始的な潜水具の一部であった可能性が指摘されています。

一体、潜水鐘とはどのようなものなのでしょうか。また、この鍋のような物体をどのようにして使い、潜水していたのでしょうか。

目次

  • 潜水鐘(せんすいしょう)とはどのようなものなのか
  • 3人ものダイバーが同時に入れる潜水鐘だった?
  • 今もある潜水鐘と似た潜水方法

潜水鐘(せんすいしょう)とはどのようなものなのか

40年以上大型の鍋だと思われていました
40年以上大型の鍋だと思われていました / Credit:Mel Fisher Museum, Sebastian

今回、潜水鐘の一部ではないかと指摘されているドーム状の物体は、1980年、フロリダ海峡で1622年に沈没したスペインの財宝船、サンタ・マルガリータ号の近くでダイバーによって発見されました。

以来40年以上は大型の鍋だと思われてきたその物体ですが、新たな研究によれば、実はサンタ・マルガリータ号の沈没から数年後、船の引き揚げ作業中に紛失した初期の潜水鐘の上部である可能性があるのです。

そもそも、潜水鐘とはどのようなものなのでしょうか。

潜水鐘(せんすいしょう)は、英語でダイビング・ベル(diving bell)と呼ばれ、かつて使われた潜水装置の一種です。

その名の通り、金属製の鐘のような形をした構造で、船舶から水中に吊り降ろされて使われます。

潜水鐘の外観
潜水鐘の外観 / Credit:ja.wikipedia

潜水鐘の中には、管を通して水上から空気を送ることも可能で、内部の気圧を外部の水圧と等しく保ち、水の浸入を防ぎながら、中に入った人間が呼吸を続けられる仕組みになっています。

これにより、近代的な機材を必要とせず長時間水中に潜ることができるのです。ただし、深度に応じて内部が高圧になってしまうため、減圧症のリスクがあります。

潜水鐘は18世紀にその原型が完成し、19世紀には一般的に使用されていましたが、現在は密閉型の潜水球やバチスカーフ(小型の深海観測用潜水船)が主流となったため、使用されていません。