納得のいく相続を受けるために「負担付死因贈与契約」という方法があることも覚えておきましょう。
負担付死因贈与契約とは、「〇〇の財産を渡すので、介護してほしい」など、条件付きで資産を贈与することを約束する契約です。
介護した分、納得のいく相続を受けるための制度がある【ハードル高】
介護した分、納得のいく相続を受けるための「寄与分」という制度があることをご存知でしょうか。
寄与分とは、生前に被相続人の事業を無給で手伝ったり、被相続人を介護したりするなど「特別な寄与」をした相続人の相続分を、貢献度に応じて増加させる制度です。
ただし、すべてのケースで寄与分が認められるわけではないので注意が必要です。
被相続人の配偶者や直系血族、兄弟姉妹は、そもそも被相続人を扶養する義務が法律によって定められています。したがって介護の内容によっては「特別な寄与」にあたらず、寄与分が認められない場合があるのです。
被相続人に対して行った介護が「特別な寄与」とみなされるためには、以下の要件を満たす必要があります。
・特別性
一般的な扶養義務を超える介護と認められること。要介護2以上、排せつや入浴などの介助が必要だったかが1つの目安となります。
・無償性
無償で介護をしていたこと。
・継続性
一定期間継続的に介護をしていたこと。月に数回、看病をした程度では認められない。
・専従性
仕事を辞めて介護をしたなど、介護に従事していたと認められること。
上記の4つの要件を満たした「特別な寄与」を証明する書類も用意しておきましょう。 特別な寄与を証明する書類としては以下のようなものがあります。
・医師の診断書
・要介護認定の資料
・介護サービスの利用履歴
・介護日誌(介護の詳細が分かるものを自身で用意)
上記の要件を満たしていても、遺産分割協議で相続人全員の合意が必要です。なかには証明しにくい項目もあり、相続時に介護の寄与分を認めてもらうのは容易ではないでしょう。
円満な相続に向け、生前にしっかり対策しよう
被相続人の配偶者や直系血族、兄弟姉妹は、介護をしても寄与分として認められるには、行った介護が「特別な寄与」の要件を満たしていなければなりません。
介護した分、多く遺産を相続できるようにするためには、遺言書や生前贈与、負担付死因贈与契約など生前の対策が大切です。
文・金子賢司(ファイナンシャル・プランナー)
立教大学法学部卒業後、東証一部上場企業に入社。その後、保険業界に転身し、FPとして活動を開始。個人・法人のお金に関する相談を受けながら、北海道のテレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。
(2024年04月18日公開記事)