「あおり運転」は相手に大きなストレスを与えることはもちろん、交通の混乱を引き起こし、重大事故にもつながりかねない危険な行為です。しかし2020年6月にあおり運転が厳罰化されて以降も、道路上ではしばしばこれに該当する行為を目にします。
一般のドライバーとしても、あおり運転の被害に遭うことはなるべく避けたいものでしょう。あおり行為そのものが言語道断であることはもちろんですが、自衛の手段として、「何があおり運転のトリガーになるのか」を知っておいて損はないと考えられます。
今回は実際にあおり運転の顛末を目撃した人たちから、「あおり運転のきっかけ」について話を聞きました。
目次
スピード違反の車の前に出た結果
危険運転への処罰感情があおり運転に
スピード違反の車の前に出た結果
あおり運転は多くの場合、あおる側の「邪魔された」という苛立ちによって生じます。つまりあおる側としては「相手が悪い」と一方的に考えているケースが多く、自分の通行を妨害した(と感じられる)相手への処罰感情が、しばしば危険なあおり行為につながっているものと思われます。
「高速道路を走行中、私は左車線でトラックの後ろを100km/hいかないくらいの速度で走っていました。比較的空いている時間帯でしたから、右車線から何台もの車が追い抜いていきます。
そのうち軽自動車が1台私の後ろについて、そのまま数分走ったあと、上り勾配にさしかかったところで速度が落ちたため、私とトラックを追い越そうと右車線に入ったんです。
しかしタイミング悪く、右車線の後方からはかなりの速度でワゴンが迫っていたんですね。軽がウインカーを出したときは比較的距離がありましたが、スピードの差から車線変更を終えたときには軽の直後まで来ていて、そのままクラクション。
車間を詰められながらも軽は急いでトラックを追い越し、左車線に戻りました。しかしワゴンの方も、なぜか軽を追い抜いてすぐ左に入ってきて……。トラックでその2台の状況が見えなかったのですが、いきなりそのトラックが急ブレーキを踏んで、慌てた様子で右に車線を変えたんですね。
そこで目の当たりにしたのは、ワゴンがわざとブレーキを連発して、軽を止めようとしている光景でした。軽も進路を変えて避けようとするんですが、ワゴンはその進路をふさぐように動いていて。しばらく車間を取って様子を見ていましたが、軽がパーキングエリアに入ろうとしたのに合わせて、そのワゴンも入っていきました」(50代男性)
高速道路上で追い越し車線へと移る際、右後方の車両と距離が離れているように見えても、相手車両の速度によっては危険なタイミングになることがあります。
このケースでは後続車が法定速度を大きく超えていたと考えられ、軽のドライバーとしては「安全な距離感」であったにもかかわらず、ワゴン側には「危険な車線変更」と映ったのでしょう。
もちろん法定速度を超えること自体が危険な行為ですから、ワゴン側のあおり運転に弁解の余地はないと考えられます。とはいえ「不当にあおられるリスク」を避けるうえでは、車線変更の際に相手の速度にも注意しておく必要がありそうです。
危険運転への処罰感情があおり運転に
上のケースのように、車線変更はしばしばあおり運転の原因となることがあります。とくに多いのが、ギリギリのタイミングで前に割り込まれたドライバーが腹を立て、割り込んできた車をあおってしまうケースでしょう。
「3車線の高速でジグザグと車線を変えながら、ものすごいスピードで車を追い越していく改造車がいました。どの車線もそこまで空いているわけではなかったので、かなり狭い隙間を縫っていくような感じで。
それで、一番左を走っていた私の前に出てきたと思いきや、中央車線を走る輸入車を追い越して、かなりギリギリのタイミングでその輸入車の前に入り、さらにそのまま一番右の車線に移っていったんです。
輸入車は左側から無理に追い越されたことに腹を立てたのか、猛烈なクラクションを鳴らしながら、スポーツカーに続いて右車線に入り、車間をベタ付けのまま追っていきました。ただでさえ狭いところを2台で縫っていくものだから、かなり危険な感じでしたね。結局、私の視界からいなくなるまであおりは続いていました」(50代男性)
このケースにおいては、あおられる側が「速度違反」や「みだりな進路変更」といった交通違反をしていると考えられ、周囲にとっての脅威となっていたと推察されます。このような危険行為に対する憤りが過激な追走を引き起こしており、「ドライバーの攻撃性」が交錯したことであおり運転が生じてしまったと考えられます。