この研究は、2000年にオハイオ州立大学が実施したものです。研究ではいくつかのことがわかりましたが、ここでは、「読書に関連するもの」を紹介します。まず、135人の遺伝子が同じの双子の一卵性双生児と、179人の遺伝子が違う双子の二卵性双生児を対象に、読書スキルがどこまで遺伝子に左右されるのかということを調べました。

その結果、読書理解力や聴き取り理解力は遺伝的要因と環境的要因の両方に影響されることが示されました。興味深いのは「読書スピードは4分の3(75%)が遺伝子で決まる」という点です。遺伝で読書スピードが速い人がいたとすると、その人はすでに遺伝で決まってしまっているということです。

もし、ちまたに、速読チャンピオンみたいな人がいたとすればそれは、速読遺伝子に恵まれているという仮説がすぐに成り立つでしょう。「速読は後天的に延ばすことができる」「だから速読は正しい」と主張する人もいるでしょう。

しかし、立証された文献があまりに少ないのです。固有名詞こそ出しませんが、速読術をうたう講座には1冊を1分で読むというものがかなりあります。いままで、1冊を読むことに、1時間(60分)かかっていたら、60分の1になります。2時間(120分)かかっていたとしたら、120分の1になるわけです。

私はこのような講座の多くは眉唾モノだと考えています。読書スピードを実際に測ることは困難です。テレビ番組などで実演して本をパラパラしているのがありますが確認する術はありません。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)