そういう意味では、今回の「裏金問題」については、検察による事実解明にはもともと限界があったと言わざるを得ない。

一方、自民党として、裏金の事実解明を行おうと思えば、行えることは十分にある。「公認権」という党所属議員の生殺与奪の力を有している自民党総裁として、裏金受領議員に、受領の経緯、保管状況、使途について可能な限り調査して報告させ、十分な説明責任を果たすことを次期衆院選の公認の条件とすれば、相当程度の事実解明ができるはずだ。

「検察捜査以上のことはできない」などという腰の引けた発言は、「裏金議員への配慮」によるものとしか思えない。

このような、裏金の事実解明に後ろ向きの姿勢を取り繕うためか、河野氏は、裏金議員への対応として、「不記載と同じ金額を返還をしていただくことでけじめとする」などと述べている。

自民党総裁として、裏金議員に返還を求めるというのは、どういうことなのか。この「裏金」は、派閥から所属議員にわたったものであり、自民党は返還を求める立場ではない。しかも、既に「寄附」として資金管理団体や政党支部の収支報告書の訂正をしている。仮に、議員個人に「返納」させるという意味であれば裏金が政治資金規正法に違反する議員個人宛のお金だったことになり、資金管理団体、政党支部宛の政治資金の不記載ととらえた検察の認定とも食い違うことになる。

「返還」と言っても、実質は「不記載額と同額の制裁金を科す」という意味であれば、そもそも、不記載の金額以外はほとんど事実解明も行われていないのに金銭的制裁を科すこと自体が問題であり、しかも、既に行った党の処分との関係で「二重処罰」の問題も生ずる。裏金議員側が反発するのも当然だ。

単なる思いつきで、このような裏金議員への対応を打ち出したとすれば、裏金問題、政治資金問題が最大のテーマになる総裁選への出馬会見での発言として、あまりに無理解・無責任だ。河野氏は、このような政治資金問題に関する発言を見る限り、総裁候補として失格と言わざるを得ないだろう。