目と脳をつなぐ視神経に障害が起こり、徐々に視野が狭くなる病気「緑内障」。患者数は全世界で約8,000万人にのぼり、日本人の失明原因第1位の疾患とも言われている。

緑内障の原因は人によってさまざまだが、多くは目の圧力である“眼圧”の上昇が原因だという。そのため、緑内障の治療では眼圧の変動の常時モニタリングが求められる。しかし、触眼圧計のない患者の自宅や外出先で眼圧を把握するのは難しい。

そこで、米国のデジタルヘルス企業Injectsenseは、超小型の埋め込み式眼圧センサーを搭載したインプラント「iOP-Connect」を開発。今年8月に、初めて同製品の人体移植を成功させたと発表した。

米粒より小さいセンサーで、眼圧の情報を自動記録

iOP-Connectは、患者の眼圧を遠隔でモニタリングするという、これまで満たされてこなかったニーズに対応する新技術。患者の日常生活を妨げることなく、24時間365日、患者の眼圧に関する情報を自動的に記録する。

その結果、医師は治療による眼圧低下効果をリアルタイムで把握できるようになり、より効果的な個別化医療、視力維持の改善、患者の生活の質の向上を目指せる。

センサーの体積は2立方ミリメートル未満で、米粒より小さい。半導体製造技術に依拠していることから、大量生産は年間数百万ユニットにスケールアップできる。

デバイス自体はポリマーフリーで生体適合性(異物に対する反応としてよく知られる)があり、完全に密閉されているため、電子機器と体内の体液・組織が接触することはない。体内で何十年も作動することが可能だ。

なお手術の際は、iOP-Connectをインジェクターツールの先端に装着し、医師が注射で眼球の扁平上部に送る。

次のステップは、薄膜のマイクロバッテリー搭載

iOP-Connectの研究は、チリのサンティアゴにある眼科センター「Centro de la Vision」のJuan Mura博士が主導している。Mura博士はiOP-Connectのインプラント手術を行い、低侵襲で縫合糸を使用しない処置を実証。チームは、外部リーダーを用いて眼圧データを収集した。