■ソファにピアノも 古き良き銀座の名店

BARTENDER
屋良利宗さん(バーテンダー歴45年)

昭和はとうに過ぎ去ったが、時にはあの頃に戻りたい……。

「ST.SAWAI オリオンズ」の扉を開ければ、そんな願望が叶う。

半世紀変わらない逸品とともに「ST.SAWAI オリオンズ」(銀座)|フードを愉しむBAR
(画像=「うちは音楽と食事と語らいのお店。静かな音楽と食事、飲み物でおもてなしを末永く続けられたら」と屋良さん。、『男の隠れ家デジタル』より 引用)

天井に吊り下がるシャンデリア、革張りの大きなソファにグランドピアノと懐かしさいっぱいの光景。こうした店が健在なのも銀座という街の底知れぬところだろう。

「50年ちょっと前の1972年。その年に先代の澤井慶明がオープンさせました。私はその少し後に銀座を目指して沖縄から東京へ出てきたんです。専門学校へ通うといって親を何とかごまかして。最初のクラブでは、まだ若かったのでお姐さんたちにちょっかい出されて(笑)。それで、紹介されてここで澤井に会ったのが始まりです」

半世紀変わらない逸品とともに「ST.SAWAI オリオンズ」(銀座)|フードを愉しむBAR
(画像=オーナーの屋良さんの温厚な人柄のように、店内の雰囲気も穏やかだ。、『男の隠れ家デジタル』より 引用)

代表の屋良利宗さんが話してくれた。創業者の澤井さんは伝説的バーテンダーとして業界では知らぬ人がいなかったほどの存在だ。

「気さくな人でしたよ。お客さまとすぐに仲良くなっちゃう。とくに女性に好かれて、よく一緒のテーブルで飲んでいましたね」

半世紀変わらない逸品とともに「ST.SAWAI オリオンズ」(銀座)|フードを愉しむBAR
(画像=毎週水曜に行われるピアノの生演奏はラウンジピアニスト・岩倉康浩さん。雰囲気にぴったりのムーディーな演奏。、『男の隠れ家デジタル』より 引用)

澤井さんから店を引き継いだ屋良さんは、そういって微笑む。この店で半世紀近くも勤めてこられただけに仕事ぶりが丁寧。

まず出してくれたのはホイッスルピッグ10年 スモールバッチ・ライのハイボール。なかなか飲む機会のないカナダ産の原酒で造ったライウイスキー。料理と一緒に軽く味わおうと、ソーダで割ってもらった。

半世紀変わらない逸品とともに「ST.SAWAI オリオンズ」(銀座)|フードを愉しむBAR
(画像=特選和牛ローストビーフ (3850円)。「一流レストランにも負けない味」と評判のローストビーフは創業当時から変わらぬうまさの看板料理だ。、『男の隠れ家デジタル』より 引用)

この店はいわゆるレストランバー。名物の「特選和牛ローストビーフ」を味わってみた。

柔らかく人肌ぐらいの温かさがあり、大変なうまさだ。今まで私が持っていたローストビーフの概念と真逆なのに驚いた。付け合わせのホースラディッシュ(西洋山葵)との相性も良く、やみつきになりそう。

美食家の客が「東京會舘、帝国ホテル、オリオンズ」と3本に数えたというから本物だろう。レバーペースト、チリコンカンとともに創業からの味を今も守っている。

2杯目はスコッチのシングルモルト、グレンモーレンジィを注文。

半世紀変わらない逸品とともに「ST.SAWAI オリオンズ」(銀座)|フードを愉しむBAR
(画像=冬にお勧めのホットワインを使った「ワイングロッグ」(1870円)。、『男の隠れ家デジタル』より 引用)

「寒い寒い」と入って来た女性客にはホットワインに上白糖を交ぜた干しブドウと刻みアーモンドを沈めたワイングロッグを勧めていた。

懐の深い店だ。折よく水曜なので静かにピアノの生演奏も始まる。ああ、この至福の時。しばらく令和に帰れそうにない。

半世紀変わらない逸品とともに「ST.SAWAI オリオンズ」(銀座)|フードを愉しむBAR
(画像=奥行きのある店内。カウンター席で仕事ぶりに見入るのも良い。、『男の隠れ家デジタル』より 引用)