イタリアに舞台が移ると、手の平に血が滲むキリスト像、涙を流すマリア像と定番の現象を紹介した後に、「魔法の手」を持つジョバリー・アンドリーニが登場。この先生はパーキンソン病、小児麻痺、ダウン症、結核と、あらゆる症状の患者を手かざしで治してしまうのだが、彼の診療所がスゴい。各部屋・待合室・廊下の壁一面が、上から下までおびただしい数の額で埋め尽くされ、それらはすべて自分が掲載された新聞・雑誌記事や表彰状、勲章の数々が飾られている。「俺ってすごいだろう」と言わんばかりのいやらしさ全開!

その診療所の一室で、カメラは小児麻痺を患う若い女性の治療を追う。足の指には赤いマニキュア。何の必要があってかシャツとセーターを首までたくし上げられ真っ赤なブラを見せ、下半身はスカートを脱がされ面積の狭い白い下着だけ(かなりエロい姿)。治療後、下着のまま足を上げ下げさせる。まるでセクハラオヤジだ。

 舞台は西洋からアフリカ大陸へ。ガーナでは、子宝に恵まれない45歳の女性を祈祷する儀式が行われている。打楽器のリズムに乗り踊り狂うその女性を背後から受け止め、露わになった乳房を両手で揉みまくる祈祷師。これもセクハラだ。別の村では、ジョギングパンツをはいた行者が雨乞いの魔術で見事に雨を降らせる(スコールだって)。多才な行者は、竹ベラで少女の患った目玉をグイグイえぐり、数時間後に傷跡もなく完治させる心霊手術まで披露する。ここでナレーションが「超常現象を否定する者は、もはや時代錯誤としか言いようがありません」と、猜疑心を抱く観客に釘を刺す(笑)。

 さて、いよいよ作品のクライマックス「空中浮揚」だ。日没になると、大樹の下にいる行者オワクが、村人による打楽器のリズムに乗り、両手を左右に広げ、ユラユラと1メートルほど浮揚する。カメラマンがサイドに回り、トリックがないことを強調。すると突然、オワクは糸が切れたように落下しドスンと尻餅して苦笑い(本当に切れた?)。

 お次はブラジルのリオデジャネイロ。マリア様を祀る広い集会場で、複数の霊媒バアサンがアチコチで祈り、依頼者に手をかざす。泡を吹いてぶっ倒れるモジャモジャ頭の霊媒。「うぶぶぶ」と体を激しく振動させながら崩れ落ちていく手足の曲がった男。総じてラリっているような霊媒と依頼者たち。よく見ると、霊媒たちは葉巻のような物をくわえてスパスパしている。薬物だろう。

 極め付きはラスト近くのこれ。イエズス会の司祭から内密の情報を得た撮影スタッフが、ある夫人の家に行くと、そこには何度抜いても手足の中に針が現れる夫人がいて、人形に針を刺すブードゥーの呪いにかかっているのだという。手術で針を摘出するシーンを映し、「こういったケースはブラジルでは数限りなく起きている(そんなバカな)。取材できたのは我々が初めてだ」とナレーションが胸を張る。核爆発による真っ赤なキノコ雲が「ズーン」と上がって終わり。

 この作品、千葉耕一の名調子によるナレーションがなければ、とても観られたものではない。ヤラセに取り込まれていた当時の観客は、いったいどんな思いで観たのだろうか……。当ジャンルは劇場作品としてはこの1本で終わり、これはある意味貴重な作品なのかもしれない。

■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
ウェブ連載・「幻の映画を観た! 怪獣怪人大集合」

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文=天野ミチヒロ

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提供元・TOCANA

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