※こちらは2020年の記事の再掲です。
――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!
『恐怖・怪奇・悪霊 超常現象の世界』 1975年・西ドイツ(1976年日本公開) 監督/ロルフ・オルセン
昨今の超常現象を扱うテレビ番組は、素人でも映像をデジタル加工できることを視聴者も理解した上で観る、送り手と受け手の相互理解によるバラエティー番組だ。だが1970年代に世界を席巻したオカルト・ブーム時、超能力や心霊現象を特集したスペシャル番組に多くの国民が釘付けとなり、本気で戦慄を覚えた。その原型ともいえる西ドイツの超常現象ドキュメンタリー映画が、モンド映画の亜流といった色合いで日本に上陸した。
1974年、スプーン曲げのユリ・ゲラーが公式来日し、五島勉の『ノストラダムスの大予言』(73年、祥伝社発行)が大ベストセラーとなった。映画業界も『エクソシスト』、『オーメン』、『キャリー』と次々にオカルト映画が大ヒット。並行してライオンに人が食い殺される記録映画『グレート・ハンティング 地上最後の残酷』(75年)が当たると、超常現象ドキュメンタリーという新機軸『恐怖・怪奇・悪霊 超常現象の世界』が日本公開された。だが興行成績は振るわず、今から28年前に徳間コミュニケーションのシリーズ企画「TCCカタスメント’89」でビデオ化されたが、それを最後にソフトのリリースは途絶えた。
■あらすじ
冒頭部、元アポロ14号の宇宙飛行士として有名なエドガー・ミッチェル博士が現在は超能力や霊の研究をしていると紹介され、カントやゲーテの言葉を借りて霊的な存在を示唆する。「ほら、偉い人たちも霊魂を信じているでしょ?」といったアピールだ。そんな前置きが10分もあって、ようやく本編がスタートする。
スイス・アルプスの山村で悪魔祓いが行われ、「関係者の名前は明かせませんが」とナレーションが入るも、堂々と素顔を晒している30代くらいの女性が登場。彼女の家で家族と神父がお茶を飲んでいると、女性が突然「アヒャ~!」と奇声を発し、テーブルを蹴り神父の頭髪をつかむなど大暴れ。「これは悪魔の仕業だ」とナレーション(なにかの病気では?)。
この作品、随所でこういった日本語のナレーションが入るのだが、ナレーターは名声優の千葉耕一(耕作)。筆者的にはドラマ版『ジャイアントロボ』の「がんばれ大作少年! がんばれジャイアントロボ!」といったナレーションや、吸血鬼ドラキュラのクリストファー・リー、フランケンシュタイン男爵のピーター・カッシング、『ロッキー』シリーズのトレーナー・ミッキー(バージェス・メレデス)の吹き替えなどが印象深い。
次はイギリスのオカルト事情。ここ5年で2,500人を祓ってきたエクソシスト。世界中から毎年50万人が訪れるロンドンの「心霊主義者協会本部」でイタコを行うサッチャー似の霊媒。サイキックを研究する怪しい博士などを次々に紹介する。