花火大会やキャンプなど外での活動が増える時期には、私たちが大嫌いな存在「蚊」との戦いも再開されます。
蚊よけスプレーはよく知られた対抗策ですが、最近、新たな方法が考案されました。
アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)に所属するオマール・S・アクバリ氏ら研究チームは、蚊よけに役立つ「遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌」を開発したのです。
実験ではこれをマウスに塗布することで、天然の皮膚細菌と比べて、蚊の誘引力を最大64.4%も減少させることに成功しました。
研究の詳細は、2024年7月30日付の学術誌『PNAS Nexus』に掲載されました。
目次
- 蚊を引き寄せる原因は「人間のヒト皮膚細菌」
- 遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌をマウスに塗ると蚊よけになる
蚊を引き寄せる原因は「人間のヒト皮膚細菌」
蚊が近くを飛ぶときの「プーン」という耳障りな音、刺された後にしばらく続くかゆみは、私たちをイライラさせます。
さらに蚊は、マラリアやデング熱、黄熱病など、多くの致命的な病気を媒介します。
そんな「厄介な敵」である蚊は、私たちが吐き出す二酸化炭素、体温、そして皮膚細菌叢に引き寄せられ、血を吸います。
そのうち二酸化炭素と体温は、蚊を人間がいる方向へと誘導します。
しかし、蚊が人間の存在を把握できたからといって、それがすぐに吸血に結びつくわけではありません。
吸血可能な部位である皮膚に蚊を導くのは、人間の皮膚細菌叢なのです。
人間の皮膚には約1000種類もの微生物が存在しており、様々な役割を果たしています。
特にブドウ球菌属(学名:Staphylococcus)とコリネバクテリウム属(学名:Corynebacterium)は人間の皮膚に最も多く存在する細菌種の1つであり、ヒト皮膚細菌叢の45~80%を占めています。