一方、ゾーリンゲン市があるノルトライン=ヴェストファーレン州のヴュスト州知事は「明らかにテロ行為だ」と非難し、「この攻撃は私たちの国の自由と生活様式に対するものだ」と語り、「私たちの国は揺るがない。私たちはテロや憎しみによって動揺することはなく、私たちの生活様式を守り続ける」と述べている。

事件が報じられると、「なぜ容疑者は難民申請が却下された時点で国外退去処分を受けなかったのか」とショルツ政権の難民政策に疑問を呈する声が聞かれる。容疑者はシリアからブルガリア経由でドイツに入っている。

その一方、ドイツでは厳しいナイフ禁止法に関する議論が起きている。ショルツ連立政権の自由民主党(FDP)は24日、法改正の可能性に賛意を示している。ブシュマン法相も「今後、連邦政府内でこの種のナイフ犯罪との戦いをどのように進めるかについて議論する予定だ」と、ビルド日曜版に語っている。

「緑の党」のハーベック副首相は「ゾーリンゲンでの恐ろしい事件が、より厳しい法律で防げたかどうかは分からないが、いくつかの法的な強化は明らかに正しく、必要だ」と述べ、「ドイツの公共の場でナイフなど必要ない。私たちは中世に生きているわけではない」と強調している、といった具合だ。

ショルツ政権のSPD、緑の党、FDPはゾーリンゲン事件の容疑者がナイフで襲撃したことから、公の場でのナイフ携帯に関する問題をテーマ化しているが、問題は容疑者が難民申請を拒否されながら、送還されずにドイツ国内に潜伏できたことのほうが本来、深刻なテーマだ。

野党第一党「キリスト教民主同盟」(CDU)のメルツ党首は、ショルツ政権に対し、移民政策の転換を求め、連立政権内で行われている武器法の厳格化を巡る議論を批判、「問題はナイフではなく、それを持ち歩く人々だ」と強調する一方、シリアやアフガニスタンへの強制送還およびこれらの国からの難民受け入れの停止を求めている。