RetiSpecが開発している手法はAIなどを用いて発展させており、診療現場でアルツハイマー病の可能性がないか評価するのに役立つとしている。なおこの手法は現在のところ、研究目的でのみ使用されている。

早期の治療に扉

アルツハイマーは徐々に進行していく病で、根本的な治療法は残念ながら現在のところない。だが、進行を遅らせるような新薬が開発されつつあり、日本では厚生労働省が日本と米国の企業が共同開発した薬を昨年承認している。

アルツハイマー病を早期に発見できれば、早く治療を開始したり、適切な支援を受けたりなど、患者の生活の質を向上することも期待できる。

差し当たってRetiSpecは、革新的な治療の導入を促進するための活動をしている米国の非営利組織グローバル・アルツハイマー・プラットフォーム・ファンデーションがスポンサーとなって行われる研究に参加する。認知能力が低下している人と正常の人合わせて1,000人のサンプルを用いて、RetiSpecの検査を含むアルツハイマーのマーカーと診断の基準の関係性を調査するという。

研究で有用なデータが得られれば、同社が目指す商業化に向けて大きく前進しそうだ。

累計調達額は1,700万ドルに

同社の今回の資金調達はカナダのベンチャーキャピタルiGan Partnersが主導し、新規出資者としては米製薬大手のイーライリリー・アンド・カンパニーや医療機器・ソフトウェアのトプコンヘルスケアが参加した。既存投資家からは、自動車や航空宇宙産業向けの電気光学製品などを手がけるジェンテックス・コーポレーションや、ミネソタ大学のディスカバリー・キャピタル、オンタリオ脳研究所などが出資した。

今回のシリーズAにより、2016年創業のRetiSpecの累計調達額は1,700万米ドル(約25億円)となった。資金調達とともに、同社はトプコンヘルスケアの最高商業責任者(CCO)を役員に迎え、商業展開に向けて着実に準備を進めていく構えだ。