子供の教育資金源といえば学資保険や定額・定期貯金が主流だった。現在は、ジュニアNISAも教育資金確保の手段になっている。ジュニアNISAは投資を利用し、教育資金を増やしながら確保するものだが、学資保険と比べてどんな優位性があるのだろうか。

子供の教育資金源として優先すべきはジュニアNISA?学資保険?

子供にお金の心配をさせずに生き生きとした人生を送ってほしいというのは、すべての親の願いだろう。しかし、子育てにはお金もかかる。文部科学省による子供の学習費調査(2016年度)によると、幼稚園から高校まで全て公立に通った場合、かかる費用の総額は約540万円。大学入学から卒業までの授業料や仕送りまで考えると倍額以上は蓄えがあったほうがいいだろう。

この教育資金をどうやって貯めるか。選択肢と考える人がおそらく多いのが学資保険・定期預金・ジュニアNISAだろう。

しかし最近は低金利が続いており、定期預金ではリターンはほぼ期待できない。そこで注目されているのが、学資保険やジュニアNISAだ。この2つは定期預金よりも元金を増やせる可能性が高く、同じ金額を必要な時まで預けるなら定期預金よりもメリットがある。

問題は、学資保険とジュニアNISAにどのくらいの割合で資金を配分するかだ。これを解決するためには、両方の仕組みの違い、メリット・デメリットを知っておく必要がある。

教育費をねん出する方法はこの2つだけということはないが、今回はこの2つの選択肢について検証してみよう。

「ジュニアNISA」 リスクと引き替えに利益をあげる

ジュニアNISAは、未成年者向けの非課税投資制度だ。仕組みは成人向けのNISAとほぼ同じで、制度が運用される期間は、2016年1月から2023年12月末までだ。

ジュニアNISAの仕組みは、未成年者が本人名義の投資口座を持ち、本人の資金で投資を行い、利益をあげることだ。投資できる金額は、1年間に80万円までと制限があるが、ジュニアNISA口座内で上がった利益に対しては、税金がかからない。非課税期間は、口座開設から5年間である。

投資の利益に税金がかからないので、通常であれば20%近く取られる税金を節約し、そのまま教育資金にすることができる。ジュニアNISA口座で購入できる投資商品は、株式投資だけでなく信託商品など、様々な商品が含まれる。元本割れのリスクが常にあるとはいえ、リスクの少ない商品を選ぶことも可能だ。

また、ジュニアNISAの運用は、本人以外にも親や祖父母といった近親者が代理で行うことができる。もちろん、本人に運用を任せることも可能だが、子供が小さいうちは、投資商品の選択などは保護者が行うことになるだろう。

「学資保険」 元本に万が一の保険がついてくる

学資保険は、文字通り学業のための資金を貯める保険のこと。保険なので、万が一の場合の保障がついている。これは、月々の保険金を支払っている学資保険の契約者が死亡あるいは働けなくなった場合の保証である。

学資保険は、契約者に最悪の事態が生じ、その後の保険金の支払いができなくなった場合でも、満期になればかけていた金額分の保険金を受け取ることができるのである。これ以外にも、学資保険は特約をつけることで子供が病気やケガをした場合に保険金を受け取ることが可能だ。

保険料払込期間が終了するまで保険料を支払い続ける必要があるが、支払った保険料は金額に応じて税額控除を受けることができる。毎年11月頃に保険会社から「年末調整用重要書類」と書かれた閉じ込みハガキを受け取った経験のある人も多いと思うが、その書類を元に税金が控除される。

ジュニアNISAと学資保険 仕組みの違い

ジュニアNISAと学資保険の仕組みの大きな違いは3つある。

まず「制度利用期間」の違いだ。学資保険は制度ではないので利用期間に制限はないが、ジュニアNISAは2023年に制度が終了してしまう。2023年までは、非課税期間の5年間を過ぎても新規にジュニアNISA口座を作れば、引き続き非課税の恩恵を受けることができる。しかし、2023年以後は制度自体がなくなってしまうため、新規に口座を作ることも、ジュニアNISA口座内で新しく投資商品を購入することもできない。

次に「利用開始可能時期」の違いだ。ジュニアNISA口座を作成できるのは、口座開設者になる子供が生まれてからだ。それに対して学資保険は、一部の例外を除き出産予定日の140日前から保険に入ることができる。

3つ目の違いは「運用者にかかる労力」だ。ジュニアNISAは投資で教育資金を増やすという性質上、お金だけ入れておいてそのまま放置というわけにはいかない。投資先の選定も売買の判断も口座を運用する保護者が責任を持って行う必要がある。信託商品などのリスク分散型商品はあるものの、口座開設後一度も確認せずに放置しておけば、利益を取りこぼすだけでなく、元本割れのリスクが高まる可能性さえあるだろう。

学資保険は保険の申込が完了すれば、定期的に保険料を支払うだけで放置が可能だ。学資保険に対してアクションを起こすタイミングがあるとすれば、小学校入学や健康祝い金などの祝い金を引きおろすときか、オプションでつけた子供への医療保険の申請時程度だろう。保険料を毎月支払うのが面倒であれば、契約時にまとめて全額支払うことも可能なので、この場合は、お金さえ払ってしまえば後は定期的にくる保険会社からの案内ハガキを待っていればいい。

ジュニアNISAの運用 メリット・デメリット

ジュニアNISAと学資保険の仕組みの違いをみたところで、メリットとデメリットについてみていこう。

まず、ジュニアNISA運用のメリットは2つある。1つは、最低投資額が低いこと。口座を開設した証券会社にもよるが、例えば、SBI証券でジュニアNISA口座を開設し、投信積立で資産運用をする場合は、1回の取引金額は100円からと非常に敷居が低い。。

2つ目のメリットは、定期預金や学資保険よりも効率的に教育資金を増やせる可能性が高いことだ。ジュニアNISAのデメリットでもある元本割れのリスクと背中合わせではあるが、分散投資やドルコスト平均法を利用することで、ある程度までリスクを抑えることはできる。ただし、世界情勢の影響で株価が大幅に値下がりしてしまうような状況ではこの限りではない。

学資保険の運用 メリット・デメリット

学資保険のメリットは、安全性が高いことだ。定期貯金機能もあり、契約者の死亡などのやむを得ない事情が生じた場合の保証もある。気軽に引き出せるものでもないので、うっかり使い込んでしまう可能性は低いし、ATM使用料が利息を圧迫することもない。満期を迎えれば、確実に教育資金を手に入れることができる。

デメリットは、満期を待たずに引き出した場合に元本割れする可能性が高いこと。最低でも3年から5年間は保険料の支払いを続けないと、支払い続けてきた金額未満の額しか戻ってこない場合が多い。

また、オプションでつけることができる子供に万一があった場合の医療・死亡保障には注意が必要だ。「ついでだから」とオプションをつけすぎると、学資保険の性質よりも医療保険の性質が強くなってしまう。その結果、満期になった時点でも多少元本割れしてしまうことがあるのだ。

ジュニアNISAと学資保険の併用運用が現実的か

ジュニアNISAと学資保険に共通しているのは、どちらも「長期的な運用の下に教育資金を貯めていく」という目的だ。しかし、両者の性質は、リスクを伴う投資型運用と安全・安心が売りの貯蓄型運用なので全く逆だ。どちらか一方だけで運用をするのではなく、両者を併用して運用していくのが、賢い保護者の選択だろう。

併用する際に考えるべきことは、教育資金以外の資産を含めた全資産の中で、高リスクなものと低リスクなものの割合がどれくらいあるかだ。

親が教育資金を熱心に貯めるのは、子供に充実した教育を受けさせ、1人の人間として充実した人生をおくってほしいと願っているから。その教育資金が、いざ使う時に資金不足になってしまっていたら、子供にとっても親にとってもこれ以上に不幸なことはない。リスクをどこまで許容できる状態にあるのかによって、学資保険とジュニアNISAへの資金配分を考えるといいだろう。

もしも資金不足になってしまった場合、奨学金や学生ローンを組めばいいと考えるかもしれないが、今般世間を賑わせているように、奨学金や学生ローンの返済に苦労する若い世代は少なくない。奨学金といえば聞こえはいいが、所詮は子供に借金を負わせることであり、できるだけ避けたほうがいいだろう。教育資金が不足してしまったとしても、安全な資産で運用していれば、奨学金のお世話になったとしても最低限の借り入れで済むのだ。

例えば、SBI証券のジュニアNISA運用例では、積極運用の例としてジュニアNISAに月々2万円。学資保険に月々1万円を入金していくケースをあげている。安定を重視した運用では、その逆の資金配分だ。

学資保険は月々の入金額が定額で決まっており、最低金額も数千円からとなっているが、ジュニアNISAは、証券会社によって1回100円からの投資が可能だ。もし、ジュニアNISAでの運用が心配であるなら「投資は余剰資金で行う」の原則にしたがって、教育資金以外のお金で少額から始めていくのが安心だろう。

ジュニアNISAは最長5年間しか利用できない。大切な我が子の教育資金をどんな手段で増やすのかは、できるだけ早く決めておきたい。

文・MONEY TIMES編集部
 

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