有象無象の施策の中では「炭素税」が比較的有力であるが、その「炭素税」にしても、炭素税が国際競争力に与える影響や、政治的な実行可能性についての懸念が大きい。「環境先進国」スイスでさえ、その大きな負担のために2050年ネットゼロを目指す「二酸化炭素法」が国民投票で否決されている。

一方、気候工学(ジオエンジニアリング)として提案されている成層圏エアロゾル注入(SAI)についても触れている。SAIは、飛行機を使って成層圏にエアロゾルを散布し、太陽光を遮断して地表の気温を下げる方法であり、火山の噴火によって気温が一時的に下がる現象を模倣している。この手法は緊急時に迅速に効果を発揮できるとされ、そのコストは脱炭素化に比べて非常に低く、効果も確実であるため、より合理的な選択肢のひとつとなる。このように人間の快適な生活を維持できればいいわけで、選択肢は多様にあるわけで、CO2にこだわる必要はない。

脱炭素は、経済発展を通じて環境問題に対処する方が現実的で、とくに途上国に対しては、ODAなどで経済的な発展を支援することで、環境問題への対応を促進することが望ましい。

本書『脱炭素化は地球を救うか』は、脱炭素化に関する技術や提言――ESG投資、電気自動車、再生可能エネルギー、電力自由化、原子力など――の有用性の是非や費用対効果を多角的な視点から分析し、気候変動対策の課題とその解決策について冷静な筆致で論じている。

序章 地球は「気候危機」なのか 第1章 人間は地球に住めなくなるのか 第2章 「グリーン成長」は幻想である 第3章 環境社会主義の脅威 第4章 電気自動車は 「革命」 か 第5章 再生可能エネルギーは主役になれない 第6章 電力自由化の失敗 第7章 原子力は最強の脱炭素エネルギー 第8章 脱炭素化の費用対効果 終章 環境社会主義の終わり

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