カマラ・ハリス副大統領SNSより

顧問・麗澤大学特別教授 古森 義久

アメリカ大統領選挙で注視を集めるカマラ・ハリス副大統領の外交や防衛についての考えがわからない――こんな疑問が米側の大手メディアで正面から提起された。

アメリカの大統領選挙ではいまや民主党指名候補のハリス氏に最大ともいえる関心が集まってきた。バイデン大統領が選挙戦から撤退した後、後継となったハリス副大統領は最近の支持率調査では共和党候補のドナルド・トランプ前大統領に追いつき、追い越しかねない人気急上昇をみせてきた。アメリカ大統領選挙の構図がいまや一転したわけである。

ではアメリカ初の黒人女性の大統領ともなりかねないカマラ・ハリス氏とはどんな政治家なのか。どんな政策や思想の持主なのか。こうした諸点となると、厚いカーテンが急に降りるような感じとなる。

肝心のアメリカでも、そして日本でも、ハリス氏の政治指導者としての実像がなかなかみえてこないのだ。とくに外交政策や軍事政策、国際戦略という分野でのハリス氏の思考がわからない。

この点への広範な懸念を集約したような評論がアメリカの大手紙ウォールストリート・ジャーナルに掲載された。8月9日付の社説だった。

ちなみにアメリカの主要メディアは新聞でもテレビでも民主党びいきが多数派である。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNテレビなど、日本でもなじみの深い主要メディアは年来、民主党を支援する。逆に共和党には厳しい姿勢をとり、とくに保守主義に徹底するトランプ前大統領への態度は辛辣をきわめる。

そんななかで全米の多数の新聞のなかでも最大の発行部数を誇るウォールストリート・ジャーナルは民主党寄りではなく、客観性が強い。どちらかといえば保守傾斜だが、トランプ候補にも批判的なスタンスをみせる。アメリカの多様なメディアのなかでも客観性、中立性が強い主要新聞だといえる。

だが同紙の主張は注目に値するとも言えるのだ。アメリカ一般のハリス候補に対する認識を示す指針として意味は大きい。