■考察する面白さと考察される面白さ

 現在のホラーはファンによる考察がブームを支えている。考察という形でファンは作品に関わり、作り手を越えて想像を広げる。昨年から話題の『近畿地方のある場所について』(背骨/ KADOKAWA)や『変な家』(雨穴/ 飛鳥新社)も、読者が作品の考察に参加できるように設計された新しいタイプの小説だ。雑誌やネットの書き込みといった情報の断片を並べ、それがつながっていくことで物語に通底する不気味な怪異が姿を現す。

『Q』にも同じことが言える。『Q』には考察してくださいと言わんばかりの正体不明さがあり、書籍版は考察の1つを提示したに過ぎない。

「今の現代ホラーファンの方って、本当にすごく考察が上手だったり、解釈や言葉にする語彙力の高さが素晴らしい方たちです。その方たちを信頼していなければ、そこで終われないと思うんです。背景もオチもきっちりつけないといけない。でもそこら辺は視聴者を信頼している分、今の形で終われるっていうのはありますね」(寺内)

 今までの作品=物語が完全にパッケージ化され、料理であれば、前菜から始まりデザートで締めるという作り手に身をゆだねるものに対して、「Q」をはじめ、最近のホラーはバーベキューのような、読者が作品に参加する面白さにフォーカスしている。

「実際コメント欄も結構盛り上がっていますね。最初はまったくそういうつもりがなく始めたんですけど、何か考察するムードが生まれて、考察が当たり前のようになっています。最初から一切狙ってないのですが、気がつけば考察されていました」(寺内)

 作品世界を考察し、どっぷりハマりたいというのは、その世界観に強烈な馬力がある証拠だ。進撃の巨人もエヴァンゲリオンも、ファンの考察で一大ブームを巻き起こした。

『Q』の世界を表現する言葉は難しい。従来の心霊ドキュメンタリーと根本的に違うからだ。奇妙な世界としか言いようがない。世の中のすき間で見つけた恐怖をクローズアップしたら、世界の骨組みが揺らぎだした、みたいな不穏な空気。

「星野源さんがQ好きらしいので、何かうまくジャンルに名前を付けてもらえたらうれしいですね」(寺内)

 トカナ読者であればツボにハマること間違いなし、必見かつ必読の『フェイクドキュメンタリーQ』ワールドである。

『フェイクドキュメンタリーQ』書籍版が爆速で重版決定!その真相を寺内康太郎監督に聞いてみた
(画像=『TOCANA』より 引用)
『フェイクドキュメンタリーQ』書籍版が爆速で重版決定!その真相を寺内康太郎監督に聞いてみた
(画像=『TOCANA』より 引用)

寺内康太郎
映画監督、『ほんとうにあった怖い話』シリーズや『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズなどの心霊ドキュメンタリー以外にもテレビドラマや映画も多数手がけている。

文=久野友萬

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提供元・TOCANA

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