日本共産党の「マルクス未来社会論」の宣伝

日本共産党は最近「マルクス未来社会論」や「共産主義と自由」を主として学生や若い党員、民青同盟員らに対し盛んに宣伝している。その背景には旧ソ連、中国の共産主義には自由がないとの根強い通念が今も広く日本国民の間に存在するからである。

その影響で、共産党が党綱領五で実現を目指す「社会主義・共産主義社会」も自由がないとみられ、このことが党勢後退にも大きく影響しているとの危機感が共産党にある(赤旗2024年6月12日)。

したがって、共産党の宣伝はこれらのマイナスイメージを払拭する「利潤第一主義の資本主義社会を乗り越えた社会主義・共産主義社会では、生産手段の社会化により、資本による労働者の搾取が根絶されるから、労働時間が大幅に短縮され、自由に処分できる時間が増え、自由な人間性の回復・向上が図られる」(赤旗2024年6月26日)というものである。

そして、共産党が宣伝する「共産主義と自由」の理論的根拠は「マルクス未来社会論」である。

「マルクス未来社会論」の内容

マルクスは、「経済学・哲学草稿」「ドイツイデオロギー」「哲学の貧困」「ゴーダ綱領批判」「共産党宣言」「資本論」などにおいて、資本主義社会以後の「未来社会論」を断片的に語っている。マルクスの未来社会論の核心は「アソシエーション」(共同社会)である。「アソシエーション」とは自立した諸個人の自由で対等な連合としての共同社会である。

マルクスは「未来社会」について「階級と階級対立とを持った旧ブルジョア社会の代わりに、各人の自由な発展がすべての人の自由な発展のための条件であるような一つの共同社会が現われる」(マルクス・エンゲルス著「共産党宣言」世界教養全集15巻117頁平凡社)と述べている。

このような共同社会は、旧ソ連の中央集権的な官僚型計画経済とは異なり、旧ユーゴスラヴィアの「労働者自主管理社会主義」に近いとも言えよう。

「マルクス未来社会論」の重大な欠陥