次世代にはピンとこない

天皇、皇后両陛下、岸田首相らは15日、全国戦没者追悼式に参列し、310万人の犠牲者を悼みました。新聞、テレビはみな「79回目の終戦の日となった15日」、「終戦から79年を迎えた15日」など、「終戦」という呼び方をしています。

全国戦没者追悼式で式辞を述べる岸田首相首相官邸HPより

「終戦」というと、戦争に勝ったのか負けたのかが分かりません。「国民の9割が戦後生まれとなり、衆院においても終戦以前に生まれた議員はわずか8名」(額賀衆院議長の追悼の辞)となり、戦争の記憶が風化していくでしょう。実際に、「えっ、米国と日本が戦争したことがあるの」という世代も増えているそうです。

はっきり「敗戦の日」というメディアがあってもいいはずです。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日経新聞も「終戦」という呼び方です。「終戦の日(敗戦の日)」と書くか、「はっきり敗戦といいにくいので、終戦という曖昧な呼び方で政府は逃げている」くらいの説明を添えるべきです。

天皇は「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返えされないことを切に願う」と述べ、岸田首相は「戦争の惨禍を繰り返さない。この決然たる誓いを世代を超えて継承していきます」と。日本の戦争史を知らない「世代に継承していく」なら、悲惨な敗戦だったことをはっきり表現していくべきでしょう。

「お言葉」、「式辞」に必ず出てくる「先の大戦」という呼び方も曖昧模糊としています。天皇は「さきの大戦においてかけがいのない命を失った多くの人と遺族を思い・・」、首相は「先の大戦では、300万人余の同胞の命が失われた」と述べています。

「先の大戦」とは、なんのことなのだろうという、若い世代が増えてくるに違いない。かつて軍部は「大東亜戦争」(閣議決定)と呼び、敗戦後にGHQに使用を禁止され、「太平洋戦争」が「先の大戦」と呼ばれることになった時期もありました。「大東亜戦争」には、侵略、植民地、日本の権益確保の意味がありましたから、GHQの命令は当然ともいえます。