そのため「人間は温度を聞くことができるか?」という質問に対して、かつての研究者はNOと回答しました。
実際、熱い水を注ぐ音と冷たい水を注ぐ音を音響学的に分析しても、決定的な差がないことが示されています。
しかし現実の世界において人間は「風鈴の音から涼しさ」「青色の視覚から涼しさ」を感じているのも事実です。
音や色を温度と結び付いているのは単なる学習の結果であり、物理的な音響属性とは無関係であるとの見方もできるのも確かです。
実際、風鈴ガラスや青色のキャンバスが「冷たい」わけではありません。
そのため研究者たちの間でも、人間が「温度を聞けるかどうか」といった問題に真面目に取り組む人々は少数派でした。
しかしどんなに可能性が低く思える仮説でも、実験を行わなければ結論は出ません。
天動説から地動説、古典物理から量子力学が誕生する過程のように、あり得ないと思っていたことにこそ真実が隠されている可能性があるからです。
そこで今回ライヒマン大学の研究者たちは改めて人間が冷たい水と熱い水の音を聞きわけられるかを調べることにしました。
人間は温度を聞ける動物だった
人間は温度を聞けるのか?