まさかの販売低迷!?その要因とは

 L700が発売された1965年当時、ホンダSシリーズの人気は圧倒的だった。L700はその心臓を移植したライトバンである。人気が出て当然のクルマだった。しかし現実はそうではなかった。販売は予想以上に苦戦する。

 販売低迷の理由については、まずスタイリングがオーソドックスすぎて個性が不足していた点があるだろう。そしてDOHCエンジンは確かにパワフルだったが、コンディションを保つのに頻繁な整備を必要とした、L700を扱う販売店の拠点数が不足していた、車両価格がライバル各車に対して高価だったなどいろいろ考えられた。理由に挙げたすべてが複雑に関係し販売低迷を招いたに違いない。

 L700そのものは、全長3690×全幅1485×全高1400mmのコンパクトサイズながら、最大長1230×幅1190×高840mmの十分な広さの荷室を備え、エンジンの高回転域を意識的に使うドライビングを心がけると、ふたクラス上級のクルマ以上の速さが楽しめる痛快なライトバンだった。

【クルマ物知り図鑑】ホンダの黎明期、スポーツカーの心臓を持つライトバン「L700」が存在したことを知っていますか!?
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【クルマ物知り図鑑】ホンダの黎明期、スポーツカーの心臓を持つライトバン「L700」が存在したことを知っていますか!?
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 L700は、発売翌年の1966年にはL800に進化する。ホンダS800と共通の791ccへと排気量を拡大し、最高出力を58psに高めた。ラインアップも標準仕様のLA800と豪華仕様のLM800の2本立てとする。

 M仕様にはラジオ、ヒーター、2スピードワイパー、ウインドゥウォッシャー、バックライト、ホワイトリボンタイヤ、コートハンガー、助手席サンバイザー、熱線吸収ガラス、メッキドアモールなどを採用。乗用車としての快適性を一段とリファインする。ちなみにL700から継承したステアリングホイールのカラーはお洒落なホワイト。

 スポーティなイメージが強いホンダだが、ことL700&L800については、メカニズム面を除き上品でジェントルな印象が強かった。

販売に苦戦したL700シリーズは、ホンダに「商品としてのクルマは、単に性能がいいだけでは売れない」という重要な教訓を残した。

 L700の苦い思い出は、翌年1967年に発表するN360に存分に生かされ開花する。L700以降のホンダ各車が、スタイリッシュなスタイリングを持ち、ユーザーニーズの半歩先を行く優れた商品性を具現化したのは、L700の失敗を生かしたからに違いない。

ホンダL700主要諸元

モデル=L700(1965年モデル)
トランスミッション=4速MT(コラムシフト)
全長×全幅×全高=3690×1485×1400mm
ホイールベース=2180mm
トレッド=前1200/後1190mm
車重=800kg
エンジン=687cc直4DOHC
最高出力=52ps/7500rpm
最大トルク=5.8kg・m/4500rpm
最高速度=120km/h
サスペンション=前マクファーソン/半楕円リーフ・リジッド ブレーキ=前後ドラム
タイヤ&ホイール=5.00-12-4PR+スチール
駆動方式=FR
乗車定員=5名

提供元・CAR and DRIVER

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