研究チームは、フェーン現象多発地域である北陸地方の富山平野を対象に、過去15年間に生じた198のフェーン現象を分析しました。

分析には筑波大学のスーパーコンピュータCOMA等が用いられ、フェーン現象を引き起こす風の経路、降水の有無、空気塊の移動速度などが解析されたとのこと。

これにより、198のフェーン現象の発生メカニズムがひとつひとつ明らかにされました。

(左)力学メカニズム。日本のフェーン現象の約80%を占める, (中央と右)熱力学メカニズムとマルチメカニズム。フェーン現象の約20%にあたる。そのうちのほとんどがマルチメカニズム
(左)力学メカニズム。日本のフェーン現象の約80%を占める, (中央と右)熱力学メカニズムとマルチメカニズム。フェーン現象の約20%にあたる。そのうちのほとんどがマルチメカニズム / Credit:筑波大学

分析の結果、フェーン現象の約80%は力学メカニズムによって発生していたと判明。

では、残りの20%が熱力学メカニズムだったのでしょうか?

実はそうでもありませんでした。

残りの20%は、一見熱力学メカニズムに見えるものの、実際には力学メカニズムと熱力学メカニズムの両方が組み合わさった「マルチメカニズム」だったのです。

つまり、これまで通説だった純粋な熱力学メカニズムは、日本ではほとんど起こっていなかったのです。

さらにフェーン現象は、これまで低気圧や台風接近時に発生するものと考えられていましたが、解析対象のうち約20%は高気圧下で発生していたと判明。

これらの結果は、これまで日本の教科書に掲載されてきた解説と異なります。まさに通説を覆す大きな発見なのです。

今後研究チームは、フェーン現象が夜間に多発する原因など、未解明な部分に関して研究を進めていく予定です。

※この記事は2021年公開のものを再掲載しています。

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参考文献

フェーン現象は通説と異なるメカニズムで生じていることを解明
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/biology-environment/20210517140100.html