政治
2024/08/20
次の自民党総裁はアベノミクスを転換できるのか
しかし日本の就業率は、G7で最高である。定年後に働く高齢者や主婦のパートが増えたので、実際の労働人口で割ると、やはりGDPはG7で最下位である。これは非正規労働者が増えて平均労働時間が減った影響も大きいが、労働時間あたりでも同じく最下位(OECDで27位)である。
アベノミクスが産業空洞化を促進したなぜこうなるのか。その最大の原因は、非製造業の労働生産性の低さである。製造業の生産性は高いが、サービス業の生産性はG7最低で、しかも下がっている。
その原因は、皮肉なことにアベノミクスの促進した産業空洞化だった。黒田日銀が2013年から大量にばらまいたマネーのほとんどは海外投資され、その収益は半分しか国内に還元されていないのだ。
同じような現象は1980年代以降のアメリカでも起こり、日米貿易摩擦の原因になった。だがアメリカの雇用が失われた最大の原因は日本企業の不公正貿易ではなく、アメリカ企業が中国やメキシコにオフショアリング(海外生産)したことだった。
これによって1990年代以降、アメリカ経済は高い成長を実現したが、グローバル企業と労働者の所得格差が拡大して分断が起こり、トランプ政権が登場した。
いま日本で起こっている円安は、高齢化と産業空洞化によって日本の国際競争力が低下した結果である。これを解決する安易な方法はトランプの主張する保護主義だが、それは問題を悪化させるだけだ。
本質的な解決策は、雇用を流動化して労働生産性を高め、企業の新陳代謝によってイノベーションを促進することだ。これこそ安倍政権が逃げてきた規制改革であり、やるべきことはわかっている。必要なのは自民党内をまとめる政治力と政策の実行力である。
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