スマートキー車両の盗難手法として、これまでは「リレーアタック」というものが主流でした。しかし、近年はより悪質な「コードグラバー」という手口が台頭。後者はまだまだ知名度が低く、これから更に被害が増加していくと考えられます。
しかし、コードグラバーの認知度が徐々に増加してきた矢先、またもや新たな盗難手法が登場しました。その名も「CAN-INVADER(CANインベーダー)」。
本記事ではCANインベーダーの詳細な手口や対策方法を解説していきます。
目次
CANインベーダーとは?
CANインベーダーの仕組み・手口
CANインベーダーとは?
CANインベーダーとは、車のいたるところに通っている「CAN信号」という配線を経由して車両のシステムに侵入し、解錠やエンジン始動などを行う盗難手法です。
海外ではすでに認知され始めている手法で、日本でも徐々にCANインベーダーによる被害が増加しています。
ちなみに海外でCANインベーダーは「OBD Port Theft」や「OBD Car Theft」などと呼ばれているようです。OBDというのは、CANインベーダーの手口(後述)に登場するシステムの名称に由来します。
リレーアタックやコードグラバーとの違い
リレーアタックやコードグラバーに共通するのは、盗難する車両のスマートキーが発する電波を利用するという点。
一方のCANインベーダーは、スマートキーの電波を利用せず、自動車のシステムに直接侵入します。そのため、スマートキー車を狙った従来の犯行とは対策方法も異なってくるのです
CANインベーダーの仕組み・手口
まず、CANインベーダーの解説へと移る前に、現在ほぼすべての車両に搭載されている「OBDⅡ(オービーディーツー)」というシステムについて簡単に説明します。
OBDⅡとは、要するに自動車の情報が集約されるターミナルのような機能です。
近年の自動車はもはやコンピューターと言えるほど複雑な構造をしているため、故障した際にどこに不具合があるのかを判別するのが困難。OBDⅡはそんな時にどこの状態が悪いのかを自己診断してくれるシステムです。
OBDには専用のコネクターがあり、整備工場やディーラーなどが自動車を修理する際、「スキャンツール」と呼ばれる診断機を接続することで異常の内容を読み取ることができます。
OBD専用コネクターの車両装着位置は、メーカー関係なくほぼ統一されており、運転席の足元にあることがほとんどです。
OBDの悪用=CANインベーダー
ここでCANインベーダーの説明に戻ります。CANインベーダーは、自動車の様々な情報が集約されるOBDⅡへと不正にアクセスし、盗難する車両を解錠、運転できる状態にします。
具体的には、OBDⅡに繋がる「CAN信号」という配線にアタックすることでシステムへと介入しています。
CAN信号は専用の機器さえあれば車外からもアクセス可能で、スマートキーは必要ないというのがCANインベーダーの手法となります。
CANインベーダーが成功してしまうと、ドアロックの解錠はもちろん、純正カーアラームの解除や合鍵の作成まで可能だと言われています。
CANインベーダーによる盗難方法
従来のCANインベーダーは、OBDⅡのシステムに介入してセキュリティを解除する機器と、エンジンを始動させる機器とに分かれていました。
そのため、エンジンルームやバンパー内を通るCAN配線に機器を割り込ませてセキュリティやドアロックを解除した後、車内のOBDⅡコネクタに始動専用の機器を接続するなどしてエンジンを始動させる必要がありました。
しかし近年は、これらの機能が統合された新型CANインベーダーが数十万円程度の価格で出回っており、配線に割り込ませればセキュリティ解除とエンジン始動の両方ができるようになったため、さらに短時間での犯行が可能になっています。
また、CANのシステム解析も進み、対応車種も続々と増えている模様です。