たとえば光合成を担う植物の葉緑体の内部では、量子力学的な仕組みを使ってエネルギー生産の効率化が行われていることが明らかになっています。
同様の量子力学的な活動は、細菌や動物の細胞などでも発見されています。
このことは、地球の生態系が量子力学の仕組みによって支えられていることを示しています。
量子世界でみられる現象は直感に反し、日常世界と隔絶しているように思われていましたが、実際には生命活動に組み込まれ、命を構成する一要素にもなっていたわけです。
では、脳細胞ではどうなのでしょうか?
もし脳細胞が不思議な量子世界の仕組みを使っている場合、既存の仕組みのAIでは人間の脳機能の模倣において決定的な要素(量子システム)を欠いていることになるでしょう。
というのも既存の生成AIでは、脳細胞と電気信号を模倣した仕組みを採用していますが、その基礎原理は点と線を結ぶ古典物理学の範疇に留まっています。
具体的には仮想空間に細胞の代りとなる点(ノード)を設置し、学習を行うことで点と点の間の接続(エッジ)を最適化していくという過程を経ますが、この過程には量子力学的な要素は含まれていません。
そこで今回、研究者たちは、脳細胞において量子力学的な仕組みの発生源が存在するかどうかを調べることにしました。
脳には「光のもつれ」を生成する量子器官が存在する
脳細胞では量子力学的な仕組みが働いているのか?
働いているとすれば、どこが発生源なのか?
答えを得るため研究者たちは各種の脳細胞を細かく分析し候補となるものを探しました。
するとミエリン鞘(ミエリンしょう)と呼ばれる特殊な細胞膜の層が研究者たちの目を引きました。