高額報酬を得ながら事業成長の足を引っ張っている

 国交省は保安基準適合を確認した3車種の出荷停止指示を解除したものの、立ち入り検査で発覚した不正を問題視し、トヨタに対して道路運送車両法の規定に基づいて是正命令を出した。同時に1カ月以内に抜本的な再発防止策を報告し、その後も四半期ごとに再発防止策の実施状況を報告するよう指示した。是正命令では「経営層による開発・認証業務の理解促進及び統治体制の強化」「経営層による認証ルールの理解・遵法意識の向上」といった、まさに豊田会長に反省を求める内容が含まれている。

 一方で、是正命令によってトヨタでは新型車開発や市場投入などのスケジュールにも影響が及ぶのは避けられない見通しだ。再発防止策として新型車開発スケジュールを緩やかにするのに加え、国交省がトヨタの提出する型式認証申請を厳密に調べるためだ。ただでさえ豊田会長の言動によって人気モデルのヤリスクロスなど3車種の出荷停止が長引いたのに加え、新型車の発売が遅れると、事業でも大きなマイナスのインパクトを受ける。豊田会長が認証不正発覚の感想を聞かれ「ブルータスよ、お前もかという感じ」と発言し、トヨタの認証部門に「裏切り者」の烙印を押したこともあって、トヨタ社内で豊田会長をはじめとする経営陣に対する不満が高まっている。

 しかも豊田会長の24年3月期の役員報酬は16億2200万円と、トヨタの歴代役員のなかで過去最高額だった。トヨタグループによる不正の発覚前の前期の9億9900万円から6割増となった。豊田会長は24年3月期は会長で、佐藤恒治氏が社長兼CEO(最高経営責任者)だが、トップであるはずの佐藤氏の報酬は6億2300万円だった。高額報酬を得ながら事業成長の足を引っ張っている豊田会長ら経営陣に対して、トヨタ社員は冷ややかな視線を送っている。

トヨタは8月9日、国交省に再発防止策を提出した。その内容は、第三者的な立場で認証試験をチェックする「社内審査官」を新たに置くことや、認証業務の人員を1割増員するなどの内容。試験結果は自動で記録され、内容を試験後に書き換えできない仕組みも導入する予定。

 社内で不満が高まっていることから佐藤社長は「経営と現場の両軸で大変多くの課題があり、経営の責任を認識している」と述べ、経営陣の役員報酬を減額する方針を明らかにした。ただ、減額の対象やその規模は明らかになっていない。従業員の賃金と役員報酬の格差が大きく拡大しているなかで、経営陣が失った信頼を取り戻すのは難しい。

(文=桜井遼/ジャーナリスト)

提供元・Business Journal

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