子供の虐待に特化した脳回路があるようです。
2021年に発表されたハーバード大学の研究によれば、マウスの脳には乳児虐待を受け持つ専門的な神経回路(虐待回路)が存在するとのこと。
虐待回路を活性化されると、オスもメスも子供に対する攻撃性を芽生えさせ、子供の虐待が起こりました。
この研究に関する論文は、科学雑誌『eLife』に2021年8月23日付けで公開されています。
目次
- 子供を虐待するときだけ活性化する神経回路が存在した
- 人間にも虐待回路があるかもしれない
子供を虐待するときだけ活性化する神経回路が存在した
直接的な殺傷から育児放棄まで、子供に対する虐待は哺乳類全般に広くみられる現象です。
例えばチンパンジーの社会では、群れのボスが変わる時期に、前のボスとの間に生まれた子供が、新たなボスによって次々に殺害されることが知られています。
また犬や猫・マウスなどでは、親が子供を殺して食べてしまう「子食い」現象が報告されています。
しかし、虐待が起こるとき、脳内でどのような変化が起きているかは、不明のままでした。
そこで今回、ハーバード大学の研究者たちはマウスを用いて、虐待にかかわる神経回路の特定を目指しました。
研究者たちはまず、子殺しを実行したマウスの脳の摘出して分析し、通常のマウスとの違いを探索しました(※マウスは通常の生活環境でも一定確率で子殺しを行う)。
結果、子殺しを行ったマウスでは、視床下部にある特定領域のニューロン「PeFA-Ucn3」(PeFA領域のウロコルチン-3発現ニューロン)が有意に活性化していると判明します。