新型コロナウイルスの影響が経済を直撃した2020年。早期・希望退職者を募集した上場企業数は、リーマン・ショック後の2009年に次いで多かった。どの企業やどの業種で早期・希望退職者の募集が行われたのだろうか。ランキング形式で紹介していこう。

2020年の希望退職者企業別ランキング

2020年12月、民間調査会社の東京商工リサーチは2020年1月から12月7日までの上場企業における早期・希望退職者の募集状況を発表した。

2020年に早期・希望退職者を募集した上場企業は判明しているだけで90社に上っており、2009年の191社に次ぐ高水準。募集人数は合計で1万7,697人となっており、こちらも2009年に次いで多かった。

早期・希望退職者募集を行った上場企業の募集人数ランキングは、以下の表のとおり。トップ10に有名企業が名を連ねている。

順位 企業名 募集人数
1位 日立金属 1,030人
2位 レオパレス21 1,000人
3位 コカ・コーラボトラーズ
ジャパンホールディングス
900人
4位 ファミリーマート 800人
5位 東芝 770人
6位 シチズン時計 750人
7位 セガサミー
ホールディングス
650人
8位 ノーリツ 600人
9位 三菱自動車工業 550人
10位 ミツバ 500人

ちなみに、ファミリーマートでは800人の募集に1,025人が応募、レオパレス21では1,000人の募集に1,067人が応募するなど、募集人数を上回る応募が目立つ。

1位:日立金属(1,030人)

日立金属が希望退職者の募集を発表したのは2020年10月。新型コロナウイルスの感染拡大の影響による業績悪化が理由。期間従業員なども含めると、国内におけるリストラは2,770人に上る。

2位:レオパレス21(1,000人)

レオパレス21はアパートの施工不良問題が響き、経営が悪化している。その状況下で人件費を減らすために、希望退職者の募集を2020年7月末まで行った。店舗の閉鎖計画も併せて発表している。

3位:コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(900人)

新型コロナウイルスは、自動販売機での飲料販売にも影響を与えている。コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスは2020年10月に900人の早期退職者の募集を発表しており、コスト抑制で経営の立て直しを図る考えだ。

2020年の早期・希望退職者募集企業数の業界別ランキング

東京商工リサーチは、早期・希望退職者を募集した企業が多かった業界もランキングで紹介している。12月7日時点のトップ4業界は、以下のとおりだ。

順位 業界 募集人数
1位 アパレル・繊維製品 17社
2位 自動車関連 11社
3位 電気機器 10社
4位 外食 7社

1位:アパレル・繊維製品(17社)

アパレル・繊維製品を扱う業界の上場企業で、早期・希望退職者を募集したのは17社。募集企業全体の約19%をアパレル・繊維製品業界が占めている。具体的な企業としては、青山商事(400人)などがある。

コロナ禍は、特にアパレル業界に深刻な影響を与えた。百貨店の一時閉店により店舗営業が制限されたほか、緊急事態宣言などに伴う外出自粛措置によって客足が激減。そのような状況の中、もともと経営状況が悪化していた老舗のレナウンが経営破綻し、話題になった。

2位:自動車関連(11社)

自動車関連企業もコロナ禍を免れることはできなかった。工場の操業停止などを余儀なくされたほか、国内外で自動車や部品の販売が落ち込み、業績が低迷する企業が相次いだ。自動車関連業界では、三菱自動車工業が550人の募集を行っている。

3位:電気機器(10社)

電気機器業界では10社が早期・希望退職者の募集を行った。東京商工リサーチは「市況の悪化や拠点の集約が背景」としている。電気機器業界では、東芝が770人の募集を行った。

今後コロナリストラは進むのか?

新型コロナウイルスに関してはワクチンの開発が進んでいるが、変異種の感染者が各国で確認されるなど、予断を許さない状況が続いている。その中で、コロナ禍が引き金となる希望退職者の募集は今後も続くと見られる。

東京商工リサーチによると、2021年に早期・希望退職者の募集を開始する上場企業はすでに9社に上っており、人数は2,000人近くになるという。経営状況の悪化が顕著な企業は多く、場合によっては募集企業数や人数は2020年を上回る規模になるかもしれない。

東京商工リサーチは「コロナが直撃したBtoC業種に加え、今秋以降増加している製造業でも構造改革を大義名分とした人員削減が本格化する可能性がある」と分析している。

 
執筆・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)

国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。  

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