そして午後9時20分、再び小池氏からA氏に、
〈明日の4時から 郷原と黒木亮が外国記者クラブで記者会見とのこと。その前に全部済ませます〉
というものだった。
小池氏の「天敵」としての「郷原と黒木亮」小島氏は、「全部済ませます」という言葉から、声明文作成と発出の真の主役が小池氏であり、それですべてを封じるという強い意志の表れだと述べている。
それに加え、この小池氏のメールの文面は、この私や黒木氏との関係で、極めて重要な内容を含んでいる。
私が、小池氏が2期目出馬を強行した場合に、公選法の経歴詐称が「虚偽事項公表罪」に該当する可能性があることを指摘した前記記事に続き、偽造の卒業証明書をテレビ番組で提示した「偽造私文書行使罪」の成立の可能性もあることを指摘した【小池百合子氏「卒業証明書」提示、偽造私文書行使罪の可能性】をアップしたのが6月6日の午前11時24分、憔悴し、途方に暮れた表情をしていた小池氏が小島氏に学歴詐称疑惑を払拭する方法について相談し、小池氏にカイロ大学から声明文を出してもらうことを提案されたのは、この日の夕刻、私の記事のアップの半日後のことだった。
都知事就任後の小池氏が「豊洲市場移転延期」等で人気の絶頂にあった2016年11月に出した【小池都知事「豊洲市場問題対応」をコンプライアンス的に考える】から、2017年7月の【“自民歴史的惨敗”の副産物「小池王国」の重大な危険 ~代表辞任は「都民への裏切り」】まで7本の記事を出し、2017年6月には、元総務大臣の片山義博氏との対談本【偽りの都民ファースト】で、小池都政を徹底批判していた。
さらに、2017年の衆院選に際して、小池氏が「希望の党」を設立して国政に進出しようとした動きについて、【希望の党は反安倍の受け皿としての「壮大な空箱」】などと、それがいかに「空虚」なものかを指摘し、衆院選挙後の2017年10月の【平成「緑のタヌキ」の変 ~衆院選で起きた“民意と選挙結果とのかい離”】【“幻”に終わった「党規約による小池氏独裁」の企み】などで、小池氏の政治家としての姿勢を厳しく徹底批判していた。エジプトでの取材の経験もある黒木氏は、小池氏の卒業証明書の偽造の疑惑を、緻密な分析で指摘していた。
それだけに、A氏宛てのメールで「郷原と黒木亮」と呼び捨てで表現した「郷原」と黒木氏は、小池氏にとってまさに「天敵」とも言うべき存在であり、その私が学歴詐称追及第2弾として出した【小池百合子氏「卒業証明書」提示、偽造私文書行使罪の可能性】は、すぐに読んだはずだ。
小池氏は、当時、反小池で批判を強めていた都議会自民党も、自民党の実力者の二階俊博幹事長から都連の有力者を通じて働きかけてもらえば、その批判を抑え込むことは可能だと思っていたはずだ。また、マスコミも、日ごろから手懐けており、実際に、少なくとも都政クラブ加盟の新聞やテレビは、それまでも「小池批判」はほとんど行っておらず、正面切って批判しないようにする自信は十分にあったはずだ。
しかし、私が指摘していた「司法リスク」は、それらとは性格が異なるものだった。
私は、学歴詐称疑惑について説明をすることなく、2期目出馬を強行した場合、公選法の「虚偽事項公表罪」だけでなく、エジプトで偽造された疑いのある卒業証明書を日本のテレビ局で提示したことについての「偽造私文書行使」という新たな犯罪の嫌疑を指摘していた。その有力な根拠を提示していたのが黒木氏だった。
そのまま2期目の出馬を強行し、私が指摘するような「犯罪リスク」が顕在化すれば、小池氏の政治生命の終焉を意味するだけでなく、それまでの政治家としての名声は完全に失われることになる。小池氏は、出馬を強行するか、何らかの理由をつけて回避するか、ギリギリの決断を迫られていた。
そのような「天敵」の私と黒木氏が、FCCJで外国人記者を集めて記者会見を行えば、小池氏に対して無批判の日本のメディアとは異なり、海外メディアで大きく取り上げられる可能性がある。小池氏は、絶体絶命の状況に追い込まれていた。
小島氏から「カイロ大学に声明を出してもらう」という案を聞き、それが危機の打開の唯一の方法だと考えた小池氏は、早速、当時ブレーンだったA氏に協力を求めた。そして、僅か2日で、カイロ大学の学長名の声明をエジプト大使館のフェイスブックに掲載してもらえる目途がついた。その時点で、メールに書いたのが、郷原・黒木のFCCJでの会見の前に「全部済ませる」という強い意思を表現した言葉だった。
「大学を卒業していない小池氏」と結論づけた小島氏小島氏は、A氏が書いた声明文の原案と実際の「カイロ大学声明」と比較し、文章の構造で、日本語の訳文では「精査」「看過」「適切な対応」など、同じ文言も多いことから、A氏の文案を土台に使ったのは明白だが、変更された部分として、
A氏案の〈カイロ大学の卒業名簿にその記載がある〉〈卒業の判定は大学としての公正な審理と手続きを経てなされたものである〉削除され、〈卒業証書はカイロ大学の正式な手続きにより発行された〉と変更されていること A氏案の〈日本、エジプト双方の法令に基づき適切な対応を検討している〉が〈エジプトの法令に則り、適切な対応策を講じることを検討している〉と変更されていることがあり、これらのことから、本来この疑惑は、卒業名簿に名前があるのならば、カイロ大学がそれを出せば済むことに、これを削除したことから、卒業名簿に名前がないことを推測している。
また、〈公正な審理と手続きを経てなされた〉も削除されたのは、実際には審理も手続きもしていないから、カイロ大学を刺激することを懸念したものと推測している。
さらに、「日本の法令」で裁くという部分が削除されたのは、仮に日本で裁く場合、裁判所から小池氏が証言を求められたりする可能性があり、それは避けたかったと推測している。
これらを踏まえ、小島氏は、
いずれにせよ声明文は、図らずも、私が発案して、A氏が文案を作成した。それに小池さん自身が修正を加えた。そして、ここからは推測になりますが、彼女側から大使館へ依頼して掲載された。これがカイロ大学声明発出の内実だ、というのが私とA氏の結論です。
私とA氏が果たした役割を鑑みれば、カイロ大学が自発的に小池さんの疑惑を懸念して声明文を作成した、ましてやエジプト政府が関わったなどということは、ほぼあり得ません。大学を卒業していない小池さんは、声明文を自ら作成し、疑惑を隠蔽しようとしたのです。
と結論づけている。
都知事選の3期目の出馬が注目される中で、小池氏の学歴詐称疑惑は、【女帝 小池百合子】に匿名で登場していた小池氏とエジプトで同居していた北原百代さんが、同書の文庫本発売時の昨年11月に実名を明らかにしたこと、カイロ大学声明による学歴詐称疑惑の隠蔽工作に関わった小島氏が、その経緯を告白したこと、という二つの有力事実が出てきたことで、もはや否定しようのない「学歴詐称」になったと言うべきであろう。
エジプト大使館を巻き込む隠蔽工作まで行って学歴詐称疑惑を跳ねのけて2期目の出馬を強行したが、元側近の告白で発覚して絶対絶命の状況にある小池氏は、今度はどのような奇策を弄するのだろうか。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?