「カイロ大学学長声明」によって小池氏学歴詐称疑惑は一気に沈静化
小島氏の記事は、「相談したいことがあるの」と小池氏に呼び出され、都民ファーストの事務所に足を運び、憔悴し、途方に暮れた表情をしていた小池氏を見て非常に驚いた場面から始まる。
その場で、小池氏から、「カイロ大学学長からの、同大学を卒業した小池氏へのイベントへの招待状」を見せられ、学歴詐称疑惑を払拭する方法について相談された小島氏は、「カイロ大学から、声明文を出してもらえばいいのではないですか」と提案した。
6月9日の午後4時から外国特派員協会で、私と、オンライン参加の黒木氏との記者会見を予定していたが、そのわずか2時間前の午後2時過ぎ、カイロ大学学長の署名入りの「声明:カイロ大学」と題する文書が、突然、駐日エジプト大使館のフェイスブックに掲載された。
小島氏も、
9日の午後4時から日本外国特派員協会(FCCJ)で行われた、黒木亮さんと元検事の郷原信郎さんによる、小池さんの学歴詐称疑惑を追及する記者会見も勢いを失いました。
と述べているが、実際、記者会見での外国記者の反応は冷ややかなものだった。記者の質問の多くは、小池氏を擁護し、卒業証明書が偽造だとする黒木氏の見解に疑問を呈するものだった。会見の内容を報じた外国メディアはなかった。
直前に出されたカイロ大学声明の効果は甚大だった。
私は、小池氏の前記の二つのYahoo!記事に、【追記】として、以下の記述を追加し、私が記事で追及した小池氏の学歴詐称疑惑についてカイロ大学の声明が出たことを紹介した上、以下のように述べた。
このようなカイロ大学側のコメントは、石井氏の著書や黒木氏の記事で紹介されていたものとほぼ同趣旨である。「卒業した」と述べているだけで、それを具体的に裏付ける事実は全く含まれていない。
むしろ、今回の声明で、注目すべきは、カイロ大学の声明が、エジプト大使館のフェイスブックに掲載されたことである。この声明にエジプト大使館が公式に関わっているとすれば、なぜ、小池氏の個人的な問題に、エジプト大使館が関わるのかという疑問、しかも、本来、大学卒業の有無は、卒業生に交付された卒業証書や卒業証明書によって証明されるべきものであるのに、なぜ、カイロ大学が、小池氏を特別扱いするのかという疑問が生じる。
不可解なのは、小池氏の学歴詐称問題が再び注目を集めたのは、石井妙子氏の著書【女帝 小池百合子】が5月31日に発売されたのが契機であり、まだ一週間余りしか経っていないことだ。しかも、日本の一般メディアでは、その問題は殆ど報じられてもいない。それなのに、なぜ、エジプト大使館やカイロ大学が、「学歴詐称」や卒業証書の信憑性が問題になっていると知ったのか。小池氏側から何らかの働きかけがあったのではないか。日本は、エジプトに多額のODAを供与している。そういうエジプトとの関係を背景に、小池氏が個人的な問題に関して、エジプト大使館を通じてカイロ大学への働きかけをしたとすると、日本とエジプトとの外交関係に影響する問題にもなりかねない。
しかし、カイロ大学声明が出された後、メディアは、小池氏の学歴詐称疑惑を取り上げることは全くなく、小池氏は、2期目への出馬を表明、7月の都知事選挙では、366万票を獲得、次点と281万票もの大差で圧勝し、再選を果たした。
小島氏も、以下のように述べている。
提案から僅か2日でカイロ大学声明が出た経緯この声明文の効果は絶大でした。新聞やテレビなど大手メディアが、一斉に「カイロ大学が声明を発表した」などと報じたからです。燃え広がっていた学歴詐称疑惑は、一気に沈静化しました。
私はこの時「大手メディアは、大使館のフェイスブックに載っただけで信じるんだ。大学ホームページを調べたり、アラビア語の原文はどう書いてあるかとか、学長への取材などもしないのだろうか。それで済むんだ」と正直、不思議に思いました。
小島氏は、当時は、小池さんの「卒業はしている」という言葉を信じていた。しかし、小池氏にカイロ大学に声明を出してもらうことを提案したのが6日の夕方、それなのに、わずか2日で学長のサインのついた「声明文」が大使館のフェイスブックに掲載されたことに疑問を持ち、その後、「本当は大学を卒業していないのではないか。だとしたら、私は疑惑の“隠蔽工作”に手を貸してしまったのではないか。」と不安に苛まれるようになる。
そして、元ジャーナリストで小池氏のブレーンの一人のA氏から、「カイロ大学声明は、文案を小池さんに頼まれ、私が書いたんです」という話を聞かされ、自分が提案してから、声明が出されるまでの、以下のような経緯を知ることになる。
2020年6月7日、午後2時4分、当時小池氏の側近で現千代田区長の樋口高顕氏からA氏へ、メールで、カイロ大やエジプトから声明を出させるため、急ぎ文案を作りたいので指導協力を求めてきた。
これに対してA氏は、カイロ大学の声明文だけでは追及は止まらないと考え、直ちに、小池氏本人にメールで
〈まず、カイロ大なりから声明を出させる。明日にでも。「法的対応も辞さず」くらいの強いのがいい。卒業証明書もカイロ大から出してもらう。そして、間髪入れず二階氏からカイロ大声明を理由に都連、都議会自民の動きを潰してもらう〉
と伝えた。
すると2分後、樋口氏からA氏のスマホにショートメールが来た。
〈大学ないし国からの、望ましい声明文面案、作っていただけないでしょうか。すいません 本人から声明文案、作っていただけないかと依頼ありました。かなりつかれてました〉
この依頼を受けて7日午後2時51分、A氏はカイロ大学声明案を書き、メールで小池さんと樋口さんに送り、A氏が、
〈カイロ大学が大使館に託した声明文を、まず、大使館がホームページに掲載する。大使館は、小池氏に対しても、同文書を掲載したこと、日本外務省に通知したことと合わせ、通知する〉
という案を送ってメールを送信し、電話をして、口頭でも説明したところ、翌8日の午後8時34分、小池氏からA氏に、翌日、大使館のフェイスブックに掲載される英文のカイロ大学声明文の画像が送られてきた。