11月30日付で「中国のゼロコロナ抗議は国民を解放するのか?」と題したブログを掲載しました。その時は中国国民が白紙の紙を掲げて政府に強く抗議する模様が各地で行われ、中国外でここまで明白な抗議運動が報道されるのも珍しい状態でした。ところが、中国政府はこの直後から驚くことにコロナ緩和政策を次々と発表します。まるでそれまでの頑なな規制を否定するがごとくどんどん緩まっていく、そんな感じです。
しかも中国の変化はそれにとどまりません。習近平氏はビジネス音痴と揶揄されるほどイデオロギー中心主義者でありましたが、ここも緩んできているのです。「不動産事業は人が住むためのもので投機対象ではない」という姿勢も緩和方向にあると報じられています。ブルームバーグによると中国経済の実務的な指針を決める中央経済工作会議が15日から始まりますが、ここでの大きな議論は23年度の経済反転が主眼とされます。数多くの指標や目標の中には不動産市況の回復が盛り込まれる可能性が高く、その一環として不動産投資が多少しやすい環境整備をするのではないか、とされます。
当然ながら23年度のGDPの5%以上といった高い目標もあがりますが、その最大の原動力は最終的には鎖国の撤廃であると予想されます。時期の推測は困難ですが、コロナ規制が少しずつ緩んでいき、来春には条件付きでの海外との往来が緩和され、秋から冬にかけて更に緩和が進んでいくとみています。
これは今までの低迷していた資源需要が一気に逆回転することになり、一部の資源、原油や鉄鉱石などの需要は引き締まる公算が高くなります。逆に言えば、欧米で見込まれる来春の景気の落ち込みを埋める補完的関係となり、それが欧米の景気の下支えとなる公算すら出てきました。まさにリーマンショックの際の中国さまさま劇(=4兆元(約57兆円)の景気対策を打ち出し、これが世界経済が落ち込んだ中で大きな景気回復の呼び水となった一件)が再び起きるシナリオです。
更にサウジアラビアを訪問中の習近平氏はムハンマド皇太子と会談中で今回、4兆円を超える規模の経済協定を結ぶ見込みです。これは経済規模も大きいのですが、アメリカとサウジアラビアの関係が淡泊になった中で中国にすっーと付け入るスキを与えたともいえるでしょう。経済協力の内容次第ですが、石油などの安定供給の確保と中国が持つハイテクなどの技術支援といったバーター取引が見込まれるはずです。
これはアメリカにとっては外交上の最大級の失態とみるべきで、バイデン政権に対して内外から厳しい批判が出るのは確実と見られます。ムハンマド皇太子が中国とのディールに傾いたのはアメリカでトランプ氏の芽が無くなりつつある中でアメリカとサウジ及び中東との関係修復の見込みが当面立たなくなったことも関係していると思います。