森林、農地ともに土地取得時に、居住地や資本の国籍を区別する法律は存在しない。しかし、農地に関しては、法人が農地を所有するための要件の1つに「農業関係者が総議決権の過半を占めること」があり、外国資本の出資比率が50%を下回らないと、農地が取得できない制度となっている。森林と農地の比較より、農地のように国籍に関する厳しい取得要件を求めることで、外資の取得規制として機能することが確認できた。

また、森林はそのものが森林資源であり、水源地を育む役割も担っている。「水」の重要性が高まる中、外資による森林取得や開発が進むことの不利益は誰が被るのか。売却する側も短期的な利益を追求するだけではなく、長期的な影響を考えるべきではないか。そして、上流側の水源地の森林を守るためには、上流下流が一体となった水源地保全の制度等を整備する必要もあるのではないか。

4.重要土地等調査法の成立

2021年6月には「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(重要土地等調査法)」が成立し、自衛隊の基地など日本の安全保障上、重要な地域での土地利用を規制することが可能となった。

政府が規制対象とするのは、①防衛施設(レーダーサイトや陸海空自隊の司令部など)、②重要インフラ(原発、自衛隊と民間の共同空港)、③国境やその周辺の離島である注6)。施設の周囲およそ1km内や国境近くの離島を「注視区域」に定め、この区域内で日本の安全保障を脅かす土地利用を確認した場合、所有者に利用中止勧告・命令や刑事罰を科すことができる注6)。

特に重要な自衛隊司令部などの施設周辺は「特別注視区域」と定め、土地売買に事前の届け出を義務付けることになった注6)。この背景には、外国資本による不適切な日本の土地取得や利用するリスクを減らす目的がある。

5.これからどうする

土地の需給バランスの崩れが招いた現代の日本の荒廃を見る限り、欲しい人、使いたい人の手に土地が渡ることは望ましい。しかし、需要がなく、市場原理が働かない状態が現実である。現時点では、森林や農地は重要土地等調査法の対象範囲に含まれておらず、外国資本による森林の取得が進んでいるのが現実である。